後輩への指導・注意のしかた~ことタネvol.4~
バックナンバー
vol.1「ポジティブに伝える言葉のチョイス」
vol.2「リスペクトのキモチが伝わる話し方」
vol.3「受け入れられやすい意見の言い方」
――ここは、とある会社の、とあるオフィス。そこにいるのは、人間の会社員「アオイさん」。なんだか眉間にシワが寄っていますが……
アオイ:うーん、困った。もう、どうしたらいいかわからない。
ポワワワ
なぞ:なにをそんなに悩んでいるのですか?
アオイ:わ、今回は登場が早い。
なぞ:お困りのようでしたので。申し遅れました、私はアオイさんの前に随時現れる謎の生命体「なぞの生命体」ですよ。
アオイ:今回から読んでくれる方のための説明。親切か。
なぞ:それで、今回はいったいどうしたんです?
アオイ:先週からプロジェクトチームに後輩が入ってきたのだけど、普段の報告をぜんぜんちゃんとやってくれないんだよね。やってもらうように伝えているのだけど。
なぞ:アオイさん、後輩ができたのですか。明るくて仕事熱心なアオイさんを先輩に持てて、後輩の方は幸運ですね。それで「普段の報告」っていうのはどういうものなのですか?
アオイ:毎日、終業前に当日のテレアポ結果を主任に報告するんだ。後輩の分は私が取りまとめているのだけど、箇条書きにしてくれないから見づらいし、みんな所感も書いているのに後輩だけ書いていないんだよね。あと、17:50には主任に報告しないといけないから私には17:40までにはほしいのに、遅れがちだし。
なぞ:ほうほう。それでアオイさんは、どんなふうに指導したんですか?
アオイ:「見やすく、ちゃんと報告してね」って。
なぞ:なるほど。アオイさん……この紙に「大きな桃」の絵を描いてみてください。
アオイ:え?! いきなり何??
なぞ:いいから、ほら。
アオイ:はあ……(カキカキ)はい、描いたよ。
なぞ:では、この桃がどれくらいの大きさなのか、言葉で説明してもらえますか?
アオイ:大きな桃っていうくらいだから、桃太郎の桃みたいな、でっかいやつでしょう。
なぞ:でっかいとは、どれくらい?
アオイ:うーん、おじいちゃんおばあちゃんの身長の倍くらい、かな。
なぞ:わかりました。アオイさんはそう思うのですね。
アオイ:大きな桃っていったら、みんなそう思うんじゃない?
なぞ:ここに、筆者が先日登壇したセミナーで参加者の方に書いていただいたという桃の絵があります。※実際のセミナーでの写真です。
なぞ:これは、今アオイさんにしてもらったのと同じく「大きな桃」という言葉だけを聞いて描いていただいたものです。他にも「両手で抱えきれないくらい」「身長と同じくらい」などさまざまな大きさの桃が登場したそうですよ。
アオイ:へえー! 一言で「大きな桃」と言っても、みんな想像する大きさがちがうんだね。
なぞ:大きさだけじゃなく、色とか葉っぱの有無とかカタチとかいろんなちがいがあって、数十名の参加者でまったく同じ桃は二つと無かったそうですよ。
アオイ:なるほどなあ~! って、あれ? 何の話だっけ??
なぞ:はい、話を戻します。アオイさんは後輩の方に「見やすく、ちゃんと報告してね」と伝えました。「見やすく」「ちゃんと」という言葉は、「大きな」のように人によって捉え方が異なるものなんですよ。
アオイ:私が思う「見やすく」「ちゃんと」と、後輩が思うそれは、ちがうかもしれない……?
なぞ:そういうことです。後輩の方も「見やすく」「ちゃんと」しているつもりでもアオイさんには通じていなくて、もどかしく思っているかもしれませんね。
アオイ:そっかあ……じゃあ、どうすればいいんだろう。
なぞ:はいきましたー。今日の「ことタネ」いきます。
なぞ:今回のように、後輩に直してほしいところを注意したり指導したりするときの言い方には、ちょっとしたコツがあるんですよ。
アオイ:教えてーー!!
なぞ:後輩が今置かれている状況=「事実」と、自分が後輩にやってもらいたいこと=「要望」を、客観的かつ具体的な言葉で伝えることです。
アオイ:それを客観的かつ具体的な例で教えてーー!!
なぞ:例えば、提出物の期限をなかなか守らない後輩がいるとします。それをどうやって指摘しますか?
アオイ:「提出が遅いよ」かな? それだと具体的ではないな??
なぞ:そうですね。なので、こんなふうに言い換えます。
アオイ:なるほど。「遅い」は主観だもんね。それを客観的な事実としていうと「1カ月で2回」みたいな数字になるわけだ。
なぞ:そうです。「遅い」は人によって感覚が異なりますが「1カ月で2回」は誰が聞いても同じ捉え方になります。
なぞ:では、次の例。「なるべく早く、ちゃんと報告してほしい」これを言い換えるとすれば、どんなふうになるでしょう?
アオイ:「なるべく早く」じゃなくて「〇時までに」みたいに具体的な期限を言えばいいのかな。「ちゃんと」も抽象的だとは思うけど、なんて言えばいいんだろう……
なぞ:半分は正解していますよ! アオイさんがおっしゃるとおり「なるべく早く」というあいまいな表現を「明日の15時までに」というハッキリした日時に言い換えましょう。そして、どういう状態が「ちゃんと」なのかわかるように「何を」「どういう手段で」なのかを具体的に伝えるといいですね。
アオイ:おーっ! わかったよ、なぞ! 明日さっそく後輩に伝えてみる! ありがとうーー!
――次の日。
アオイ:おはようございます!
後輩:おはようございます。
アオイ:今まで報告のしかたの説明が不十分だったと思ったので、改めて説明させてもらってもいい?
後輩:お願いします!
アオイ:えっとまず、報告書の書き方なんだけど、箇条書きにして、最後に100文字以内で所感を書いてほしいんだ。それと、私への提出は毎日17:40までにしてもらうと助かるよ。
後輩:わかりました!
――その日から後輩は、アオイさんが希望する通りの報告書を遅延なく提出するようになったといいます。
なぞ:よかった、よかった。
ポワワワ
――というわけで、北村朱里のマガジン「明日の仕事が楽しみになる ことばコミュニケーションのタネ」今回はここまで。次回11月21日更新のテーマは「相手の良いところの見つけ方、ほめ方」です。お楽しみに!
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