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交渉力は、特別な才能ではなくスキルだという話。

これは フェンリル デザインとテクノロジー Advent Calendar 2022 7日目の記事です

皆さんはじめまして。
2022年7月にフェンリルに入社した、ディレクターのキタミです。

フェンリルの一員になってから、もうすぐ5ヶ月。実際に入社して感じるのは、フェンリルは体験をとても大切にしていて、成長に繋がるサポートや取り組みがいくつもあるんだなということです。

最近だと、「交渉力強化研修」という外部研修があり参加しました。その研修で、たくさん得たものがあったので、特に記憶に残った内容をピックアップして書いていきます。

交渉は、才能がなくてもできる!

白状します。研修を受ける前の私は、正直少し疑っていました。

(大人になってすっかり薄汚れてしまった心の声)
『短期間の研修で上手に交渉できるようになるなら、世の中の営業は困らないんじゃ…』
『結局はその場の頭の回転と、相手に意見を伝えることができる強い心があればいいのでは?』

ですが! 今回の研修に参加し、ガツンと衝撃を受けました。
なぜなら「交渉力とは、才能によるものではなく、シンプルなフレームワークに則った手法だ」ということを学んだからです。

「駆け引き」だけが交渉じゃない

まず交渉には、2種類あるということを学びました。

駆け引き型交渉…どちらかが勝つまで or 妥協するまで論争を続ける交渉
原則立脚型交渉…双方がメリットを得られるWin-Winを目指す交渉

「駆け引き型交渉」によって交渉が成立することもありますが、その場合、こちらはWinでも相手はLoseということになります。
となると、その後の関係性にも、少なからず影響が出てくることでしょう。

長い目で見て、相手とパートナーシップを継続していくためには、相手も自分もWin-Winになる「原則立脚型交渉」が有効になります。

見るべきポイントは、相手の「利害」

前述した「原則立脚型交渉」では、相手の利害に目を向けて交渉をすることが重要となってきます。ここで言う利害には、3種類あります。

対立する利害…お互いに排他的なもの。
共通する利害…
お互いがともに期待するもので、合意すればお互いに有益となるもの。
異なる利害…
両者にとって共通も対立もしていない利害。交渉の際、合意への鍵となる可能性が高い。

交渉をする際には、対立する利害ではなく、共通する利害異なる利害に目を向けることが重要となります。

なぜなら、対立する利害では、どこまでいっても両者譲らず平行線となるか、仮に交渉を妥結できたとしても、一時的な解決で終わることが多いからです(Win-Loseは相手に不満が残る形。長期的に見ると取引終了となってしまい、結果的にはLose-Loseとなることも…)。

Win-Winで交渉を成立するために

交渉が成立するためには、お互いの納得感が大切です。そのときに重要となるのが「ZOPA(ゾーパ)」です。
ZOPA(Zone of possible agreementの略)とは、「双方が納得感を得られる、交渉が妥結する可能性のある条件範囲」を意味します。

例えば上の図で言うと、ZOPAは「1万円から3万円の間」となります。その範囲内であれば交渉は妥結する可能性がありますが、買い手が「2,000円で!」と言ってきたり、売り手が「いやいや10万円で!」などを言い出したりすると、そもそも交渉の場自体が成立しない可能性が高いです。

アンカリング効果

交渉を有利に進めるための手段の1つに、「アンカリング効果」があります。アンカリング効果とは、心理学における認知バイアスの1つで、最初に与えられた数字(アンカー)を基準に考えることで、その後に提示された別の数字への認識が異なるという現象です。

最低でも着地を3万円にしたい場合、最初から3万円と提示してしまうと、そこから交渉が始まり値切られる可能性がありますよね。そういった場合は、理想の金額(例えば5万円)を最初にアンカーとして刺し、そこから金額を調整していくのが有効です。

よくセール品で、元値の上から赤字でセール価格が記載されていたりしますが、あれもオトク感を演出するアンカリング効果の一種ですね。

「オプション」の優先順位マトリクス

相手と自分が互いにWin-Winとなり、かつ自らの要求に最も近い形で交渉を締結させるためのアイディアを「オプション」と呼びます。
オプションには、以下の図の通り、4種類あります。

交渉の際に特に重要なのは、相手にとっては価値が高く、こちらにとってはコストが低い位置にある宝札です。他にも、コストのハードルが低い組札をいかに多く事前に用意できるかも、交渉するにあたって重要となってきます。

よく最後の切札などと言われる「切札」は、相手にとっての価値は高いですが、その分こちらのコストも大きくなります。そのため、本当に最終手段で使うことが望ましいです。

優位に立つために必要な「BATNA(バトナ)」

ZOPA、オプションと並んで、交渉で相手より優位に立つために重要なのが
BATNA(バトナ)」です。
BATNA(Best Altenative To a Negotiated Agreementの略)とは、「交渉が決裂したときの対処策として最も良い案」を意味します。

例えば先程のZOPAを表す図を振り返ってみます。

3万円で売りたい人と、1万円で買いたい人が、お互いに自分の言い分を言い合っていても交渉は前に進みません。そんなとき、実は別の人から2万5000円で買いたいと声がかかっているとしたらどうでしょうか。

売り手は、買い手が無茶な価格交渉をしてきた場合、断ることができます。すでに代替案(BATNA)が頭にあることで、目の前にいる相手に対して、臆さずに強気で交渉できるからです。こうしたBATNAやオプションを事前に準備しておくことは、交渉において非常に重要となります。

(おまけ)我にかえるための「6秒ルール」

お金の調整だけが交渉ではありません。クレームや契約をめぐるトラブルなどでも、交渉は生まれます。

交渉における2つの前提として、
・お互いに『ストレス』を抱えている
・お互いに『見えている景色』が異なっている
ということが言えると思います。

ストレスを抱えていると、時に思考より感情が頭を支配することがあります。そんなときは、ぜひ「6秒ルール」を試してみてください。

人の怒りの感情は、6秒でピークアウトすると言われています。ストレスで怒りを感じた場合は、席を立ったり飲み物を飲んだりするなど、違うことをしながら6秒間カウントすることに集中してみるとよいでしょう。

最後に

私は研修を受けるまで、交渉に必要なものはその場を上手く切り抜けられる頭の回転だったり、相手に臆することなく意見を伝えられる強い心だと思っていましたが、交渉は、その場限りのコミュニケーションではないことを今回学びました。

「段取りが大事」というように事前の情報収集、「こうあるべき」という意見、自分の思いを押し通すための説得だけでは、クライアントの心が動くことはないでしょう。そういう意味では、交渉とデザインは少し似ているかもしれません。ありがたいことに残り5回、研修を受ける機会があるそうなので、引き続きインプットをしていきたいと思います。

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