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のらねこ旅日記≪乗り物酔い・モルディブ≫

   8年間、一緒に沖縄へ行っていた友達が、こんなことを言い出しました。
「離島はともかく沖縄本島の海が昔に比べて、透明度が少し悪くなっている気がする」
「いろいろ制限が厳しくなって、自由にシュノーケリングできるところが少なくなった」と。
  友達は、ダイビングのライセンス持ちですが、素潜りも得意なので、わざわざ重い装備を着けなくても、十分キレイな海中を見れると言っていました。
  一方、私はすぐ船酔いするので、あまり船で遠くに行くシュノーケリングには参加できません。
  なので『友達が思う存分潜れて、私も楽に行ける所』を模索していました。
  そして、いっそのこと海外に行ってみようかとなり、まず安くて近いサイパンに行きましたが、あまり沖縄と変わりませんでした。
  次に、当時日本からの直行便が飛ぶようになったバリ島に行きました。
  異国情緒あふれる楽しい旅行になりましたが、海は普通の海水浴でした。
  ならば、とにかく海に特化しようと、私はモルディブを提案しました。
個人的には水上コテージに泊まってみたい気持ちがったので。
  友達も了承してくれて、旅行の計画は私に任されました。
  さて、モルディブのどこへ行こう?
モルディブは小さな島々と環礁からなる国で、首都の島、空港の島、ホテルの島、一般人が住む島と細かく分かれています。
  1つの島に1つのリゾートホテルとなっていて、交通手段はドーニーと呼ばれる木造船や、高速艇、水上飛行艇です。
  私は首都の島から高速艇で 20分の水上コテージがあるリゾートホテルをチョイスしました。
  想像通りの青い海と白い砂、そして憧れの水上コテージ、船酔いせずにたどり着けた私は大満足でしたが、1つだけ誤算がありました。
  水上コテージが建つということは、遠浅の海ということで、友達によると、数百メートル泳いでいかないと、潜れる深さにはならなかったそうです。
  それでは友達に悪いなと、翌年は水上コテージという条件は外して、海が浜からわりとすぐに深くなっているシュノーケリング向きの島を選びました。
もちろん、船で30分以内で行ける所です。
  そこは海が本当に素晴らしくて、私のような、あまり泳げない人間でも、海底から渦を巻きあふれてくるような、ギンガメアジの群れが見れて感動しました。
  でも、ホテルのコテージが野趣あふれすぎて大変でした。
シャワーが外で塀はあるが屋根はなし、ソーラー給湯らしく、雨の日は、水しか出ないので、シャワー浴びてるのか、雨を浴びてるのかわかりませんでした。
  おまけに、ホテルで出されたお昼のカレーもミートソーススパゲティも、カツオ味でした。
(現地ではカツオがよく食されるそうです)
  もうちょっと、リゾート感がほしいな、と思った私は、色々と調べて、行ってみたいと思えるホテルを見つけました。でもそのホテルの島は、空港の島のある環礁と遠く離れた別の環礁にあって、水上飛行艇で30分位の所でした。
   船で2時間以上揺られるより、飛行機で30分の方が耐えられるかも。
そう考えた私は、ここを次の目的地に決めました。
  しかし、やっぱり私は詰めが甘かった。
  当日乗り込んだ水上飛行艇は客席9つで、操縦士、副操縦士、(共に白人)と現地人の若い助手で運行していましたが、実は同じ方面のホテルを順繰りに回ってお客さんを降ろしていくものだったのです。
  途中2つのホテル島により、私達のホテル島が一番最後でした。なので実際には1時間位かかりました。
  そして、飛んでいる時はキレイな海をを空から見ることができてよかったのですが、着水してお客さんを降ろしている間は、機体がゆらゆら揺れていて
『早く飛んで、早く飛んで!』と私は心の中で祈っていました。
  こうしてたどり着いたリゾートホテルは、海もホテルも最高でしたが、帰りに苦難が待ち受けていました。
  その日は、天候が悪く海面が荒れていました。水上飛行艇には、少し沖にある浮き桟橋から乗るのですが、そこもだいぶ揺れていて、私は嫌な予感がしました。
   そして、予感は的中しました。
途中のホテル島でお客さんをピックアップするのに、海面が荒れていてうまく着水できずに、TOUCH AND GOを繰り返したのです。
『や~め~て~!』私は心の中で叫びました。この離着水の繰り返しで、私は、だんだん気分が悪くなってきました。
  さらに悪天候のため、行きよりも飛行艇は揺れて、どんどん顔色が悪くなっている私に気がついた現地人助手さんが、口元で手を開くジェスチャーで『吐く?』と聞いてくれました。私が『NO』と首をふると、助手さんは私の横の窓についている小さな空気の取り込み口を開いてくました。そこから、外の涼しい風が入ってきたお陰で、少し楽になりました。
  この件でやっぱり水上飛行艇は無理、となった私は、また船で30分以内で行ける島を探しました。
  今度の島は船で30分、でもお隣の環礁なので、一旦、流れの早い外海にでなければならず、行きは穏やかでしたが、帰りはだいぶ荒れていました。
  ドーニーという木造船はかなり揺れて、特に私達が座っている側が大きく上下に揺れていたので、船員さんが揺れの少ない反対側に座るようにと、私達を手招きしました。
  私が立ち上がって移動しようとした時、大きな揺れがきて私は前につんのめりました。
  船員さんが、ガシッと私の腕をつかんでくれたので、私は顔面を反対側のベンチシートに打ちつけずにすみました。
わずか10㎝の寸止め状態でした。
  こんな感じて、毎回エライめにあっている私ですが、それを上回るほどの素晴らしい風景を見てきました。
  どこの島だったか忘れてしまいましたが、その日は体調もよかったので、酔い止め飲んで、往復2時間のクルージングに参加しました。
   船室があり、甲板が狭いタイプの船だったので、私達以外の欧米人のお客さんたちは、みんな船室の上の屋根に腰かけていました。
  それは、ちょっと怖いなと思った私と友だちは、船室に入りましたが、そこからでは海がよく見えないのと、冷房が効きすぎて寒かったので、船室を出て屋根に座りました。
  海風が心地よく、キラキラ光る水平線をずっとながめていても、全然飽きることはありませんでした。
  初めて、トビウオが飛んでいるところを見ることもできました。
  こうして、船酔いすることもなく目的地に着いて船を降りる時、私はある異変に気がつきました。
  船室の壁のペンキの塗りむらが横にザザっと動いたのです。
  もう一度見返しても、ペンキの塗りむらは、横に流れていくように見えました。
  今度は自分の腕を見てみると、腕の毛穴が同じように横に動いて見えました。
   どうやら、目がまだ船の揺れにあわせて動いているようて、横に流れる自分の毛穴を見て
『気持ち悪っ!』と思いました。
  地面についた足元もなにやら、ゆらゆらと揺れていました。
  でも、酔い止め効果で、全く気分が悪くなることはありませんでした。
  帰路も問題なく楽しめた私ですが、
その夜は一晩中ベッドが揺れていました。
 
  
  


  
  
  
  

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