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あなたの扉は~真実との出会いを信じて~

 小学2年生のときに自転車で、2㎞離れた小さな本屋さんへマンガを買いに行った。令和の御代では新作マンガは平積みであろう。しかし懐かしき昭和の時代は、小さなガラスケースの中に新刊が2冊だけ並んでいた。白地にスカイブルーのタイトルが輝く表紙…、それが藤子不二雄さん作『ドラえもん』(第2巻)であった。
 そして、筆者が一番欲しかったひみつ道具が「どこでもドア」である。
「ハワイ」「ニューヨーク」…と行きたい場所を発するたびに、夢の国への扉が開いた♬

 先日、二十代の女性から相談を受けた。
「夢にまで見た企業への入社。そして新・社会人生活!」「社屋の全面ガラスの自動ドアをくぐれるのが嬉しかった♪」
しかし、待っていたのは新人いびり。
「何も知らない私への過剰なまでの業務と先輩の冷たい視線」「睡眠時間が削られ体調を崩した」。そして「自動ドアの前で嘔吐感に襲われ…」彼女は退社を余儀なくされた。

2023年度の大卒新入社員の早期離職率(3年以内離職率)は、32.3%である。この数字を筆者は、少ないと思えない。

 『法華経』見宝塔品第十一では、宝石に彩られた大塔の扉が開き、そこに静かに座る多宝如来が釈迦如来へ「私の横に着いてくれないか」と呼びかける。その後、二人の仏様が並んで座るという印象的なシーンが登場する。仏教では、私たちが心の扉を開くと真理・智慧と称される世界へいけるとも説かれている。

 扉は、日常と非日常の境にある…
神社や仏閣には、鳥居や山門が聖俗(せいぞく)を分ける境として建つ。寺院によっては、数十年に一度の御開帳しか許されない扉もある。

 しかし実際のところ、扉の向こうが夢の国か八大地獄かは、開けてみるまで分からない。もし、扉の奥に地獄の様相が広がっているとしたら、早めに締(し)めて、謹んでお返ししましょう。
新海誠監督作品の『すずめの戸締まり』は、そのことを教えてくれているのではないだろうか。
人生の「終末」という名の扉を閉ざすために。

そして
あらためて開けばいい…
次こそ。
星々がきらめく真実と出会えると信じて…

九拝 龍


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