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【うちのちっちゃな物語】わが家の親ばなれ子ばなれ

ラピード

 「お母さん、おれ大学辞めてきたから」3月になり、次の年に大学3年になる長男の授業料振り込みの準備をしていた私に、彼はボソッと言いました。「え~っ!…」いったい何が起こったのか理解できず、私は返す言葉もありませんでした。私に湧き上がってきたのは、「せっかく入学した大学なのに、なんで親に相談もせずに黙って辞めるの」という、怒りと絶望感でした。
 私自身、高校、大学、企業に就職、やりがいのある仕事、結婚退社…と苦労もなく歩むことができました。だからこのコースが一番楽に有効に人生を歩めると信じ、子どもには苦労が少なく危険の無い道を歩かせてあげることが親としての立派なつとめだと思っていました。

 「大学の先輩たちは就職先がみつからず、苦労している。自分は技術を身に着けたい。好きな自動車にかかわる仕事がしたい」という長男の考えを私は初めて耳にしました。これまで母親から言われるがまま行動してきた息子の反乱、いや親離れでした。
 ある方から、「子どもは自分で危険を判断して身を守り、誘惑を退け、嫌いな相手とも強調していく力を身に着けようとしている。その修行を手助けしてあげられる親になりなさい」と、アドバイスを頂戴し、「そうだ、これが親のつとめだった」と、遅い気付きをいただきました。

 長男は、「一生のうちでこんなに勉強したことはない!」と言いながら、自動車整備の専門学校に1日も休まず楽しそうに通い、国家資格もとり、バス会社で整備の仕事につき、皆さんの安全安心を守るために最善を尽くそうと頑張っています。その後家庭も持ち、立派に夫・父親の役も果たしています。

長男が大学を辞めた翌年、年子の二男も、そして数年後には3番目の長女も、「お母さん、大学を辞めたい」と言い出して…。そのつど私は少しうろたえながらも、また私の敷いたレールを子どもたちに歩ませようとしていたことを再度猛省し、この子たちが自分で選んだ道を歩めるよう応援団に徹する親になる努力をしました。う~ん、今も努力中です。

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