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てくてく北へ #3 「四国・和歌山の旅」(森山智仁)


【この連載について】
フリーライター・森山智仁さんが、2023年4月から半年かけて、鹿児島の開聞岳から北海道の羅臼岳まで、各地の山に登りながら、ほぼ徒歩で日本縦断する旅「#日本縦走」。このチャレンジを「食」の観点から綴るフォトエッセイです。鹿児島から始まった旅は(腰に爆弾を抱えつつ)海を渡り四国へ……! 今回も、ご当地ならではの味覚に出会えます。引き続き、応援よろしくお願いいたします!
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九州脱出を目前にして腰をやってしまい、滞在していた「ホテルAZ大分幸崎店」を延泊。お食事は朝夕共にバイキング形式。宿泊客の多くが現場仕事風の男性のためか、ガッツリ系のおかずが充実していて、療養にはもってこいでした。

治れ治れと念じながらタンパク質を摂る

計3泊滞在したものの、まだ動き出せる感じではなく、通っている整骨院に近い「鶴崎ホテル」に移動。ここでさらに3泊して、なんとか回復しました。

鶴崎ホテル、朝はバイキング、夜は日替わり定食なのですが……

何だこの組み合わせ……

こんなに日替わりなのは初めてでした。コンセプトから毎日違う。なんかその日テキトーに気分で買ってきたかのような食材。味はもちろんどれも良くて、厨房が料理を楽しんでいる感じがして良かったです。

さて、おそるおそるザックを背負い、行動再開。まずは佐賀関でフェリーに乗って四国に上陸。

四九フェリー、わずか75分!

スケジュール優先のため、休んでしまった分のルートは歩くのを諦め、バスや電車を使います。三崎港からバスに揺られること3時間、松山市に到着。ここで2泊して最終リハビリ兼観光です。

怪我は本当に無念でしたが、得たものもありました。石手寺の洞窟も探検できたし、松山城にも登れたし、何よりこれ。

三津浜焼き!

ホテルの近くの「やきやき鉄板グリル・ひまわり」でテイクアウト。松山のソウルフードだそうです。これはすごい! お好み焼きの王様! もりもり食える。麺が旨いし、キャベツは甘い。三津浜焼きの特徴であるちくわ(その手があったか!)が旨みをさらにプラスしていました。

松山城の二の丸、果樹や花で屋敷を再現

4月30日、バスで石鎚山の東南に位置する登山口「石鎚土小屋」に移動。「国民宿舎石鎚」に宿泊し、翌日から元々のスケジュールに復帰です。ここは山小屋というより旅館の雰囲気。早くから予約していたおかげか個室に泊まれて……

お夕食がこちら

バランスが良くおいしい! 特に右上、全身食べられる甘露煮と、鶏肉ときのこのお鍋が絶品でした。この日で旅立ちからちょうど4週間。なんとなく西日本、きのこがおいしい気がします。森林が豊かだからでしょうか。

石鎚山!(1982m)

腰の怪我が再発しないかちょっとドキドキしていたので、普段より慎重に小休止を取りながら、無事登頂。

北へ下りて、海に突き当たったら東、次は剣山(1955m)を目指します。次の登山口まで100km超、キャンプ場や旅館を渡り歩きました。その中で特に良かったのが、ゲストハウス「おさかなくん家」。

めっちゃかわいい

世の中、コラボカフェとかコンセプトバーとか色々ありますが、こちらの完成度は圧倒的。至るところにバランス良く「おさかなくん」が配置されていて、まるで絵本の世界に入ったみたいです。食事の提供なし、素泊まりのみですが、とても満足感の高い宿泊体験でした。

自由使用のキッチンで台湾まぜそば

おさかなくん家を出て約30km、死ぬまでに一度は見たいと思っていた「祖谷のかずら橋」に到着。通行料550円(ただ橋を渡るだけ!)を支払い、カップルが「きゃー」とか言いながらエンジョイしている中、成人男性1名、「うへへ……下が見える……楽しい……」と、ニヤつきながら渡りました。

結構揺れました

5月7日、久保の登山口から登山道に入り、強烈な雨風の中を登り詰めて、お亀岩ヒュッテという避難小屋に宿泊。

翌日、そのまま剣山まで縦走する計画でしたが、風の勢いが衰えず、長距離の稜線歩きは危険と判断し、三嶺(みうね)という山頂の先からいったん下山。車道で剣山へ接近していきました。駐車場やリフト乗り場の近くにある「民宿まつうら」に当日予約で投宿。

ありがてえ〜

前日、避難小屋で暴風雨をBGMに袋ラーメンをすすっていただけに、安全地帯でいただくお食事が骨身に染み渡ります。こんにゃく(右上)ってあんまりごはんに合うイメージなかったんですけど、こちらのこんにゃくに味噌をちょんとつけたやつは神がかっていて、数切れでごはん一膳いけちゃうやつでした。

翌日、民宿に荷物を預かっていただき、軽装で剣山へ。1時間半ほどでサクッと登頂。

晴れた!

これで石鎚山と剣山、目標としていた二つの山頂は踏めました。しかし、四国の真ん中にでっかい山地を残しており、怪我でパスしてしまった佐田岬も気になるし、四万十川沿いも歩いてみたいし、四国は達成感よりも再訪欲がやや勝る結果となりました。

と、締めのようなことを言ってしまいましたが、まだ続きます。剣山の山頂から東の徳島港まで80km弱、3日かけて長い下山です。そのうち1泊は、お遍路の宿「植村旅館」。お遍路さんじゃなくても泊めてくれました。

はちゃめちゃに豪華

夕食時には同宿のお遍路さん4人と談笑。昔は山をやり込んでいたという方もいて、僕の日本縦断の話を興味深げに聞いてくれました。

僕は相当若く見えるらしく、だいたいどこへ行っても大学生と思われるのですが(実年齢39)、僕の目にも登山をやっている方々は大体みんな若々しく見えます。やはり体を動かして自然と触れ合うのは人体にとってすごく良いことなのでしょうね。

朝食も豪華

ところでこちらの植村旅館、朝夕共に素晴らしいお食事が付いて、なんと1泊6300円だったんですけど、経営は大丈夫なんでしょうか……? もし素泊まりの料金と間違えていたら今から差額振り込むのでご連絡ください(私信)。

国道318沿い「セルフうどんやました」

「柚子っすぶっかけうどん」に、せりとちくわの天ぷらを付けて、580円。こちらも安い! 天ぷらは注文後に揚げたてを届けてくれるシステムで、コシのあるつやつやの麺とサクサクの天ぷらの相性は最高でした。本場のうどんで締めて、5月13日、四国編終了!

南海フェリーで和歌山へ

県立美術館や和歌山城を見物して、電車で白浜へ移動。この日も冷たい雨が降っていました。5月ってもっと晴れるものじゃなかったかなあと調べたら、やはり今年は例年よりだいぶ雨が多かったようです。

白浜駅前からバスに乗り、ホテル近くのバス停に到着したのは夜の8時半。すぐそばの「めん盛屋八両」の灯りが赤々と輝いていて、誘い込まれるように入店。

焼きめし(715円)

激ウマ。めしは熱々で味わい深くも、決して濃過ぎず、濃厚なスープとよく合います。スープはご覧の通り量がたっぷりだし本当においしい。雨に冷えた体が芯から温まりました。

ところで、縦断に対しては遠回りになるのに南の白浜へ回り込んだのは、熊野から吉野に至る「大峯奥駈道」(おおみねおくがけみち)という超長山岳道に挑戦するためと、アドベンチャーワールドに訪れるためです。ペンギンの中で最大種、コウテイペンギンと会えるのは、日本では名古屋港水族館とアドベンチャーワールドの2ヶ所だけ! 根っからのペンギン好きとして、ここを避けて通る手はありませんでした。

どっしり……

コウテイほんとデカい。抱えて歩きたい。隣で息子みたいな顔してるのは息子ではなくヒゲペンギンです。

滅多に撮らない自撮り

四国を出るところから乗り物での移動が続きましたが、熊野古道の滝尻という場所から歩行再開。次は大峯奥駈道から奈良・大阪・京都を経て、琵琶湖の西側を通って日本海側へ抜けていきます。

【北海道上陸まで残り136日・車道最短距離で1329km】


文・写真:森山智仁
Twitter:https://twitter.com/bacoyama
blog:https://moriyamatomohito.hatenablog.com/

●森山智仁のyoutubeチャンネル「東京登山」
https://www.youtube.com/channel/UC0HDQAfdJHYJtPpHgJUds1Q
Twitter:https://twitter.com/yamako_yamalove

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