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OPEN DISCUSSION.02

OPEN DISCUSSIONは、金沢工業大学にある五十嵐威暢アーカイブで開催されるラーニングプログラムのひとつです。アーカイブのスタッフがファシリテーターとなり、毎回異なるテーマに対し参加者が様々に意見を交わします。

第2回目のテーマは、「AIと芸術」です。「Artificial Intelligence」の略であるAIは、一般に人間の知覚や知性を人工的に再現するシステムと理解されています。しかし、改めて調べて見ると「人間の頭脳活動を極限までシミュレートするシステム」や「人の知的な振る舞いを模倣・支援・超越するための構成的システム」など、定義は専門家によっても微妙に違うことに気づきます。昨今、急速な技術の発展によりAIに触れる機会が多くなるなか、今回のOPEN DISCUSSIONで参加者は、未だ曖昧な存在であるAIについて深く考えることになりました。

参加者は事前リサーチとして生成AIが作る芸術作品の事例を調査してきました。「AIが自動で作成してくれる絵画」、「有名ブランドのコレクションをAIが作成し、ファッションショーに出した」など、芸術の領域でひろく生成AIが使用される現状を確認するところから議論は始まりました。

次いで、ファシリテーターがジェイソン・M・アレンの作品とファッションブランド「セルキー」の事例を提示し、AIによる芸術作品の印象を参加者に問いかけました。そこでは、「人間よりもリアルで細かい」などといった生成AIに肯定的とも取れる意見があげられました。しかし、世の中の評価に目を転じれば、否定的な意見も多く見つかります。

なぜAIによる芸術はしばしば炎上してしまうのでしょうか。「専門的技能が必要ないから自分でも作れそう」、「人が描くから価値がある」などの意見は、わたしたちが「芸術」をどのように捉えているのかと関連しているように思います。そこで「芸術とはなにか」を改めて考える手がかりとして、AIと人間による作品の同じ点や異なる点を考えることにしました。「AIも人間も作品や物事を見て学習する。経験をアウトプットする点が同じである」という意見や、逆に「人間が作った作品には意図があるが、AIは知識として理解しているだけであり意図はないのではないか」という違う点の意見も出ました。

AIによる芸術はこの先も多くの議論を生み出すことでしょう。しかし一方で、わたしたちがまだ知らない新たな価値観との出会いを生み出してくれるのもまたAIによる芸術かもしれません。ファシリテーターはその一つの可能性として、『WIRED』創刊編集長ケビィン・ケリーによる「Alien Intelligence」としてのAIという考え方を紹介されました。道具としてAIを使うのではなく、まだ見ぬ知性としてAIと出会うこと。わたしたちは、AIとの対等な関係のうえに協働の可能性を模索する必要があるのではないでしょうか。

2回目となった今回のOPEN DISCUSSION。どの問いに対しても答えはなく、難しい議題ではありました。しかし、これからも技術が発展し、AIとの共存が当たり前となる世の中で、改めてAIについて理解を深める良い機会となりました。

また次回のディスカッションもどのような盛り上がりを見せるのか楽しみです。ここまで読んでいただき、ありがとうございました。

(本投稿は、議事録を担当した学生スタッフによって執筆されました)

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