すごい福岡、人気の秘密はエフォートレス?
九州で独り勝ち
2020年の国勢調査では、福岡市の人口は161万3千人で、5年前と比べ7万4千人増加し、東京23区に次ぐ増加幅となった。この間の人口増加率も4.8%となり、政令指定都市の中でトップを記録している。
九州の中では、北九州市は2万2千人、長崎市は2万人減少しており、福岡市の人口増加の突出ぶりは明らかだ。
人口の転入超過で、東京が日本国内で独り勝ちをしているといわれて久しいが、九州内では福岡市が独り勝ちをしているといえそうだ。
福岡市は九州内の人口を吸収している。以前は、九州からの転出先が関西、関東ということがあったが、最近の若者は九州内に留まり人気の福岡市に住みたいという傾向がとりわけ女性の中には強いようだ。
福岡市以外の九州の各都市からみれば、人口を福岡市に奪われ、企業誘致や人口の転入超過で独り勝ちの福岡市には複雑な感情を抱いているのではないだろうか。
ストレスフリーな都市
福岡(以下、福岡市を指す)の何が人を引き付けるのだろうか、今年の春から福岡に住み、ずっと考え続けてきた。都市の住み心地のよさが福岡の大きな強みの一つだと気づくのにさほど時間はかからなかった。
福岡空港から都心への距離は近い。地下鉄で10分、タクシーでも20分程度のアクセスは魅力だ。また、繁華街の天神近くに店舗や事務所が集中しており、歩いて15分以内で用を済ますことができる。デパートや飲食店でも人混みを感じることがなく、概して店の人の表情は柔らかく親切だ。そして、レストランでの食事は恐らく東京より3割程度はお得な印象だ。スーパーも新鮮な食材が手ごろな値段で充実している。文化施設、娯楽施設もあり、公園も近くにある。電車の中は時間帯により多少混雑するが、今のところさほど気にならない。一言で言うと福岡は、東京をギュッとコンパクトにした、ストレスフリーの都市であると言っていいのではないだろうか。そして、山や川、海が近く、週末には1時間もドライブすれば、自然や温泉、文化財を楽しむことができる。
生活感覚からすれば、なかなか福岡のマイナス面が見えてこないのが正直な感想である。多少、気になることといえば歩道を自転車が飛ばして走るので危険と感じる程度だ。
エフォートレスが似合う
近年、「エフォートレス」という言葉をメディアで目にする。元々はファッションのジャンルとして使われ、何も努力をしないという否定的な意味ではなく、「肩の力を抜いた」カジュアルなスタイルとか、ゆったりとした服の着こなしで「気取らない」スタイルのことを指すようだ。「抜け感」や「こなれ感」といわれることもあると説明がなされている。
ファッションだけでなく、今どきは、リモートで仕事をする人が慣れ親しんだ働き方についても「エフォートレス」という言葉で形容できるかもしれない。
福岡という都市を表すのに「エフォートレス」という言葉が相応しいのではと思っている。この言葉は、福岡という都市のあり方や人々の考え方、生活のスタイルにまで適用できるのではと思うがどうだろうか。何よりも、この土地に住む人が、様々なサービスを受容する中で、エフォートを必要とせず、ストレスなく過ごしていると感じるので、この言葉が似合うと思う次第である。
やや脱線するが、著名人を引き合いに出し喩えると、福岡出身の井上陽水やタモリ、博多華丸・大吉の醸し出すオーラにこの都市の「エフォートレス」な雰囲気が出ていると思えなくもない。
住み心地のよさ
福岡の住み心地のよさという点では、これまで、国際的な情報誌でも高くランキングされ、また、住民のアンケートでも96.5%が住みやすいと感じており、内外の評価は折り紙付きだ。
そして、この都市に住む97.7%の人が福岡を好きだと思っているようだ。私もこの街に住んでみて、住民の街に対する自信と自己承認が高いことに感心させられた。
自分の街を好きだと思う人が圧倒的に多数を占める都市が住みにくくなるはずはないと思う。
現在、世界的に都市は、安全性や利便性、文化や医療、教育などの充実を評価軸として競い合っているようだ。「アジアのリーダー都市」を目指すという福岡市にとって、成熟した、住み心地のよい環境を維持することは世界中から人々を引き付けるためにも必須の条件になるのだろう。
福岡はどこへ行く?
福岡市は2023年に開かれるG7の開催都市の候補として手を上げており、また、アジアの国際金融センターとしての発展も視野に入れているようだ。現在、進行中の天神ビッグバンと称される都心再開発プロジェクトでは、今後、大小70棟のビルの建て替えが想定され、外資系企業や先進的企業を誘致する計画だという。
福岡がこれからどう変貌するにせよ、この都市の住み心地のよさは維持されて欲しいと思う。
九州には豊かな自然資源があり、文化的歴史的遺産もある。漁業、農畜産業も盛んで、温泉などの観光資源は充実している。個人的には、こうした資源を活かしながら、九州の経済は発展して欲しいと思っている。
そして、福岡には、都市のノウハウや知の集積を九州各都市とシェアしながら、九州のリーダーになってもらいたいと思う。域内の連携を深めて、九州ブランドを世界へと発信する役割をけん引して欲しい。福岡独り勝ちでなく、九州みんなで勝つ戦略を是非、実現して欲しいと願っている。
残念ながら、まだ、博多どんたくや博多祇園山笠の祭りも観たことはない。いずれ、福岡の印象も変わるかもしれない。まずは、現段階で私が感じる福岡を書き留めておきたい。
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