喫水線

喫水線は、2022年より岡田和奈佳(グラフィックデザイナー)が主宰する日本のブックレー…

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喫水線は、2022年より岡田和奈佳(グラフィックデザイナー)が主宰する日本のブックレーベルです。作家と1対1で対話を重ね、最小単位の出版を丁寧におこなうことを目指して活動中です。

最近の記事

対談:私たち(故郷喪失者)の地方(ホーム)をめぐって 河野真太郎×川崎祐

構成:川崎祐 近代的経験としての「距離を測る」 川崎 今回、英文学者で批評家の河野真太郎さんをお招きしたのは、先日河野さんが出された『この自由な世界と私たちの帰る場所』(青土社)という本を読んで、そこに自分の関心と近しいものが語られていると感じたからです。河野さんは2017年にポストフェミニズムの問題やフェミニズムの持ちうる可能性自体を、映画やアニメなどのポップカルチャー作品を題材にして論じた『戦う姫 働く少女』(堀之内出版)という本を出され、その「増補版」をこの度ちくま

    • 対談:「写真の風景をめぐって」倉石信乃×篠田優×川崎祐

      構成:川崎祐 「光景」から「未成の周辺」へ 篠田 司会を務めることになりました写真家の篠田優です。倉石さん、川崎さんの展覧会「未成の周辺」をご覧になった印象はいかがでしたか? 倉石 「未成の周辺」には、写真集と展覧会という2つの形式があります。私は写真集『未成の周辺』に寄稿していますが、寄稿段階では完成した写真集の姿を見てはいません。そもそも写真集について何かを書くこと、それは「未来に向かって書く」ということでもあります。写真集が出来上がってはじめて、それを自分の書いた

      • 『未成の周辺』について #2

        せっかくなので、今回の出版までのスケジュールと印刷についてもざっくりと残しておく。 今回、『未成の周辺』の印刷は、紆余曲折を…ほんとうに紆余曲折を経て日本写真コミュニケーションズ株式会社さんにお願いした。NDP(Nissha Digital Printingの略だそう)と呼ばれるデジタル印刷で、オフセットと大きく違う部分としては「刷版が存在しない」「色域が広い」点。DICやPANTONEなどの特色は再現できないけれど、プロセスカラー(NDPの場合の一番適した言い方がわからな

        • 『未成の周辺』について #1

          そもそも今回、このnoteを立ち上げることにしたのは、写真家の川崎祐さんに「デザイナーズプレスのことや写真集のデザインのこと、印刷のことを書いて発信したらどうでしょうか?」とこの半年くらい機会がある度に言われていたからで、「需要がないから」「刊行する書籍は私の所有物ではないから」とやんわり断ってきたにも関わらず、川崎さんは全然折れなかった。 そもそも川崎さんという写真家にはいわゆる「作家」っぽくないところがある。これは誤解されそうな発言だけど、後述する川崎さんの前作『光景』

        対談:私たち(故郷喪失者)の地方(ホーム)をめぐって 河野真太郎×川崎祐

          はじめに:喫水線について

          喫水線は昨年に出版社登録をすませたばかりのレーベルで、デザインの仕事を通して知り合った作家たちに、「自主制作で冊子をつくりたい」と立て続けに相談されたことがきっかけで立ち上げた。 2020年に同年代の小説家と写真家と共作した『震える虹彩』という本の奥付には、発行者として私と著者の2人、合わせて3名の名前が連なっている。これは出版の体裁としては「3人で行った自費出版」ということになるかと思う。だけど、このときにはすでに「喫水線」という名前で販売用のプラットフォームとしてオンラ

          はじめに:喫水線について