成長することで失われるもの

一般に、できないことができるようになることが成長と呼ばれる。できないことができるようになり、できることが増えていくことで人としての魅力が増していくのだと思うけれど、成長することで失われてしまうものもあるのだと思う。

できなかったことができるようになって時間が経つと、できなかった時の感覚が失われていく。できなかった時の感覚が失われたところでほとんどの場合困りはしないけれど、人に何かを教えたり、教育する立場にいると、できない感覚を覚えていることも結構重要なんだろうなと思う。うまくできない人の気持ちを汲み取って適切にアドバイスしたり成長するための道筋を示すには、できない時の気持ちや感覚を知っていることがきっと大きな強みになる。

今私はプログラミングを教える仕事をしているけれど、プログラミングがある程度できるようになってからかなり時間が経ってしまったので、できなかった時期の感覚がよくわからない状態になっています。教える仕事をしている中で、分かりやすい表現で教えたり、いい感じの演習問題やテストを作ることにもある程度慣れてきました。おそらく講師としてのスキルが上がってきているってのだと思うけれど、自分の理解が深まると同時にできない感覚がより失われてきているように思う。これは成長していると同時にある意味では退化もしているんじゃないかと思ってしまった。

私はいろんな感覚がポンコツなので、何か新しいことを始めたときには周りの人よりもできなくて凹むことが多いです。いろんな才能に恵まれて、いろんな感覚が優れている人が羨ましいといつも思う。だけど、初めからいろんなことができる人は、できるからこそ理解できないことも結構あるのだろうな、と思ったりもする。

人として最も魅力があるのは、多くのことで「できる」かつ「できない」の両方を満たす人なのかもしれません。

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