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埴 沙萠(はに しゃぼう)さん No.1

「この人すごいんですよ!!」

上毛高原駅行きの新幹線に乗り込んだとたんに、写真評論家の鳥原学さんは少し熱い口調で話し始めた。
ええ、すごいのはもちろん知ってるけどなあとは言わずにだまって頷き次の言葉を待った。

「いやなことをやってきてないんです」(おそらくそんなセリフだったと思う)

ああ!!確かに!すごいかも!

 埴 沙萠さん(2016年に亡くられました)は植物生態写真家として、足元にごく普通に生息している植物たちを生き生きとした一瞬をとらえて、数々の本を出版されました。私が植物を撮ることに夢中になったきっかけも、埴 沙萠さんの「植物記」にノックアウトだったのです。

写真家・カメラマンはどのジャンルでもプロの駆け出しのころはやりたくない撮影をこなしたり、撮影の合間にバイトをしたりして生計をたてる。仕事が起動に乗ったとしても、気乗りしない・もしくはストレスフルな仕事も受けないと生きていないこと多い。

だが、 埴 沙萠さんの人生をざっとななめ読みすると、どうもそんな余計な・・・というか、気負って仕事をされた形跡?のようなものがないのです。彼との多くのメールのやり取りで印象に残っているのは、「のんびり・ゆっくり」という言葉が多かったような気がします。

現在も続いている(この記事をアップしたあと、連載は4月号で終了したと知りました)、鳥原さんの某写真雑誌の連載で 埴 沙萠さんを取材されるということを聞きつけ、私も同行させていただくことに。冒頭はその行きの新幹線の中でのやり取りでした。

「いやなことをやっていない」

なんかもうこれに尽きるというか・・・。

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(右:鳥原さん 上:ミラーボールがあるんです・・・)

 埴さんが亡くなられてから、彼の日記が掲載されているホームページはなくなってしまったので、人となりがわかるものは残された出版物だけとなりました。簡単に語ることがあまりにも困難な人なんです。
でも私の植物写真の師匠のような存在なので、こうしてなんとか書いてみようと試みています。時には人生の師匠でした。写真も生き方もまったく真似できないんですけどね。

だって、名前がすごくないですか?

ハニシャボウですよ?フランス人?帰化したの?って思ったほど、ですよ。
 埴 沙萠シャボン♪シャボン♪なんて歌ができそうです。
もともとサボテン愛好家だったのですが、サボテン愛に溢れすぎてらっしゃった
その時につけられたお名前のようですが。

私が出会った時はすでに80歳だったのかな?夜中でもちょークイックレスポンスでした。なのでメールなのにほぼチャット状態。撮影技術のことを教えいただいたりしていたのですが、エネルギーがすごかったです。私の理解が悪いと、なんであなたわからないの?とずらずらーーーっと、返信がきます。おかげで一晩でウィスキーを1瓶あけてしまったじゃないか!とおしかりも。


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 埴さんは晩年NHKスペシャルに出演されてそれがものすごく反響を得る事に。
http://www.nhk-ep.com/products/detail/h19415AA
異例のアンコール放送回数だったそうです。

 埴さんの後継者、という方は出てきていないです。それだけすばらしい作品たち、、というか後に続くなんて無理!な写真たちなんです。私も植物を撮っています、なんて言ってますが 埴さんにしてみれば もう叱りたくて仕方と思います笑。
彼が撮っていた植物生態ってほんとに難しい。
ああ、きれいね、パチリ。の世界ではなくて、半端ないエネルギーが必要です。自分で機材を作ったり、一日中上を見上げたり下をのぞいたり。

それでも常にユーモアと愛を忘れない方でした。

No.2につづく


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