大学院怪談!生産的過ぎる後輩。

大学院の後輩から電話。
「ちょっと相談があるのだけどいい?1か月前に博士論文の草稿を提出したのだけど、先生たちから連絡が来ないの」
指導教員から連絡が来ないのはよくあることだと指摘しつつ、他に理由があるかもしれないなので一応聞いてみた。
「連絡が来なくて心配なことでもあるの?」
「うーん、実は博士論文が長すぎるから承認してもらえるか心配」
「僕も博論は規定よりも長かったから、学部の許可はもらったよ。単なる形式的な手続きだから、普通はあまり心配する必要はないよ。どのくらい長いの?」
「英語で80万単語」
「8万だったら規定と同じくらいだし、少し削るだけでいいじゃないか。僕のは10万単語で、300頁くらいだったけど特に何も言われなかったよ」
「私は80万って言ったのよ」
「80万?それって一体何ページになるの?」
「概算で2000頁くらい」
「は?」
「どうしたらいいと思う?」
「どうしたらいいっていうか、どうしてそうなった。コメントしろって言われても、『聖書よりは長いけれど、マハーバーラタよりは短くてよかったね』としか言いようがない。指導教員が授業教えながら2000頁の論文を一か月で読めたらびっくりするよ。どれだけ生産的なんだよ」
「生産的っていうか、博士論文は私にとって赤ちゃんみたいなものなので、大事に大事にしていたら、こうなってしまったのよ」
「再生産的且つ過保護にもほどがあるよ。2000頁の博士論文書く暇があったら、書籍数冊プラス学術論文数本だせちゃうじゃないか。形式としての博論なんて、博士号もらうためだけのものなのだから、300頁書いちゃった時点で提出しろよ(笑)」
「母親が子供を手放すのはけっこう大変なのよ。でも、2000頁の本は出版できないと思うから、書籍数冊に分けたり、別々の論文を出したらいいというのはいいアドバイスだと思うわ」
「とりあえず、重要な発見だと思うところだけまとめて博論として提出しないと、指導教官たちが読む時間がないんじゃないか」
「やっぱりそう思う?」
「思う。とりあえず、学者という仕事に必要な苦行に耐えられる精神構造を持っているということは、君のこのエピソードだけで十分わかるはずだから、博士号は多分もらえるだろう。」

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