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歴史から考えるゼネラリストとスペシャリスト

こんにちは。
三度の飯よりは歴史好きじゃない私が、近年キャリアの一大テーマであるゼネラリストとスペシャリストどちらが良いのか、という問いを歴史的観点から考えていこうと思います。


現代のゼネラリストとスペシャリスト

そもそもゼネラリストとは?スペシャリストとは?という方もいるかと思うので、簡単に解説します。他の解釈もあるかもしれませんが、いったんここでは下のように定義します。

ゼネラリスト:会社の中で様々な部署に異動して業務を行い、多様な経験を積みながらキャリアを歩む人(広く浅くタイプ)
スペシャリスト:一つの業界や職種に限定して業務を行い、専門的な経験を積みながらキャリアを歩む人(狭く深くタイプ)

日本の大手企業の総合職と言われる人たちは概ね前者のゼネラリストに該当します。(JTC総合職についての記事はこちら)


これまで、この総合職と言われるゼネラリストが日本企業での主流でした。
しかし、近年、スペシャリストたちが注目を浴び始めます。スペシャリストと言っても色んな職種がありますが、ここ数年においてはIT領域のスキルを持つスペシャリスト(SE、プログラマーなど)が、特に注目されています。

全社的にDXの推進が求められているが、社内にデジタルに詳しい人材がいないため、社外から専門知見を持つ人を採用する、といったことは大手企業ではあるあるなのではないでしょうか。その結果、IT人材はどこからも引っ張りだこで、報酬も上昇傾向にあります。
一方、社内で浅く広く経験を積んできた社員は他社から求められるようなスキルが身につかず、転職もしづらい。

最近キャリアの話でよく語られがちなのは大体このような話です。

戦前のゼネラリストとスペシャリスト

ではここでいきなり話を戦前に飛ばします。
明治維新後、政府内で権力を持ったのは、薩長土肥と言われる薩摩藩、長州藩、肥前藩、土佐藩の出身者たちです。(その中でも特に薩長が力を持っていました。)彼らは明治維新で大きな役割を果たし、その後も政府内の要職を独占しました。これを藩閥政治と言います。

明治時代の初期、政治家と官僚と軍人は明確に分けられていませんでした。どの組織の上位職も薩長の有力者が独占していたからです。これは今で言うゼネラリスト的な形だと言えます。JTCでは営業部長が異動で人事部長になるといったことが普通にありますが、それと同じように政府の高官が陸軍の大将に異動する、といったことがありました。

しかし、時代が下ると、大学や陸軍士官学校といった官僚や軍部のエリートを養成するための機関を卒業した人たちが徐々に各組織の要職につき始めます。彼らからすると、薩長の出身者というだけで、専門知識(軍部の場合は軍事知識など)を持たないにもかかわらず上位職にいる人たちは素人のような存在に見えます。

こうして、徐々に藩閥出身者たちの存在感は薄れ、昭和に入る頃にはどの組織もそれぞれの養成機関(官僚なら東大、軍隊なら士官学校など)出身のエリートたちが上位職を占めるようになります。これは藩閥政治に比べるとスペシャリスト的だと言えます。
(ただし、このエリートたちは組織の中ではジョブローテーションをしており、現在の官僚のような形に近いため、現代の視点では専門的とまでは言えないかもしれません。あくまでも藩閥との相対的なものと理解してください。)

たしかにある地域出身というだけで出世するというのは合理的ではないため、このようになるのは自然とも言えます。
ただ、藩閥政治にもメリットはありました。それは、政治と軍との間で有機的な連携ができていたことです。組織間で人事交流が活発だったり、お互いのことをよく知っていたりすることで、情報の連携がしやすかったのです。(現代の大手企業で言うと、全く違う部門でも同期には話しやすい、みたいなイメージです。)
それにより、「日本の発展」という大目標に向かって、あくまで組織は手段として存在している形でした。

それが先ほど述べたように、組織の上層部がその組織出身のエリートたちだけになると、組織間の連携が上手くいかず、セクショナリズムに陥るようになります。目的が自らの組織の発展に変わっていくのです。
それが政治と軍部の対立を生み、やがて軍部の組織拡大が目的化する中で、日本は戦争へと突入していくことになります。

もちろん、戦争の原因はこうした組織論だけにあるわけではありませんが、一つの側面であることは確かだと考えています。

今後

戦前の事例から、必ずしもスペシャリストが多いことが良いことではないということが学べると思います。前回と同じようなまとめにはなりますが、物事は多面的に見ることが非常に重要です。
ここ数年だけを見ていると、スペシャリストが増えることが正しく、今後そのようになっていくと思いがちですが、別の側面もあることを考える必要があるのではないでしょうか。

今回もお読みいただきありがとうございました!

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