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逆タイムマシン経営論

今回は私の自説ではないですが、少し前に読んだ「逆タイムマシン経営論」という本がとても面白く、私の考えにも近かったのでその感想を書こうと思います。


「逆タイムマシン経営論」について

今回読んだ本はこちらです。(特に購入をオススメするわけではありませんが、面白い本でしたのでもしよければお読みください。)

タイムマシン経営とは

「逆タイムマシン」とありますが、そもそもタイムマシン経営という言葉を初めて聞いた方もいるかと思うので、先にそちらを説明します。

タイムマシン経営とは、一言で言うと、先進地域のビジネスを後進地域で行うことです。有名なところだと、アメリカのシリコンバレーで流行っているサービスを日本で一早く導入するといったものです。ちなみに私は仕事上、新規事業やスタートアップ界隈と関わることが多いので、この言葉は本当によく耳にします。

これは、タイムマシンで未来に行って、そこで儲かっているビジネスを今からやればめちゃくちゃ儲かるやろ、といった思想から来ているものです。ただ、実際には未来には行けないので、世界の中で進んでいる地域のビジネスを真似することで、未来に行ったような状況を擬似的に作っています。

逆タイムマシン経営とは

今回のテーマである逆タイムマシン経営は、その逆です。つまり、タイムマシンで過去に向かうのです。

過去は既にみんな知っていることで、しかも古い時代だから見たところで新たなビジネスにつながるわけがない、と思われるかもしれません。しかし、そんなことはありません。過去を見ることで未来のビジネスのヒントを得ることができます。

過去にどのようなビジネスが存在し、各時代でどのような流行や進化があったかを分析することで、ある程度傾向が見えてきます。それを現代の状況に当てはめることで、未来を少し予測できるようになるという考え方です。

本の内容

この本では、いくつかの具体的事例に触れながら、同時代性の罠に注意するべき、と書かれています。こちらについて簡単に紹介します。

自動車業界

1990年代、自動車業界では「400万台クラブ」という言葉が飛び交っていました。競争力を確保するには規模が重要で、年間400万台を生産できない企業は潰れる、といった説です。実際、それに基づいてダイムラーとクライスラーや、日産とルノーが合併(一部含む)しました。

しかし、結果的にはそれは誤りでした。当時200万台程度だったホンダは成長する一方で、ダイムラー・クライスラーは解体し、日産はルノーとの合弁を一部解消しました。

事実は必ずしも流行っている説通りにはならないのです。

セグウェイ

2000年頃にセグウェイが登場した当時、これは人類の移動形態を変える革命的な製品と言われました。

しかし、皆さんご存知のように20年以上経った現在でもセグウェイは一部の物好きや限られたシーンのみで利用されるに留まり、一般に普及するには程遠い状況です。

マスメディアが注目しているからといって、成功するとは限らないのです。

同時代性の罠

現在でも同じようにビジネスシーンやマスメディアで盛んに叫ばれているキーワードがあります。例えば生成AIや人的資本経営などです。

「これからはAIの時代!ホワイトカラーの仕事は淘汰される!」、「従業員への給与をコストではなく投資として考えるべき!」

このような話は至るところで耳にします。
たしかに、AIは日々進化していますし、働き方改革も一定進んでいるように思います。 
しかし、これは同時代性の罠にかかってしまっているかもしれません。

同時代性の罠とは、現在の変化や状況を過大評価し、本質を見誤ってしまうことです。例えばAIの例だと、歴史を振り返るとこれまでも機械やロボットで人間の仕事が無くなると言われてきましたが、人間はまだまだ仕事をしています。つまり、新たな技術の登場で仕事が無くなる、というのは昔から言われていることなのです。にもかかわらず、今の時代だけが激動の時代だと思い込んでしまうことによって、AIが過大評価されるのです。

AIで何も変わらないと言いたいわけではなく、変わる部分もあれば変わらない部分もあるということです。単なるバズワードに乗っかってとりあえずAI!となるのではなく、自身や自社の置かれた状況や背景を踏まえた上で考えることが必要なのです。

罠にはまらないためには

とはいえ、今話題となっているものが単なる一時的な流行り物なのか、あるいは(例えばスマホのように)本当に世界を変えてしまうようなものなのか、見極めるのは非常に難しいです。

100%見極めるのは無理ですが、ある程度見極めるための方法として、この本では社会基盤やインフラに着目すべきと説いています。

例えば人口動態や道路や通信などのインフラです。人口動態は大きく外れることは少ないです。それを踏まえることで、今後世の中にどういう変化があるか予想することができます。

また、通信インフラではガラケー時代の3Gからスマホ時代の4G、そして5Gへと進化してきています。これは大きく方針が変わることのない長期トレンドといえます。このようなインフラがあったからこそ、スマホが普及し、大量の通信容量を使うYouTubeや Instagramなどの動画関連サービスが普及したと言えます。

感想

感想を書くと言いつつ本の内容の要約になってしまった気もしますが、結論とても共感でき面白い内容でした。

先ほど触れた同時代性の罠についても、本の中ではより深く考察されているので、流行りのワードに振り回されていると感じている方はぜひ読んでみてはいかがでしょうか。

お読みいただきありがとうございました!

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