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【こんな映画でした】630.[幸せなひとりぼっち]

2020年 3月16日 (月曜) [幸せなひとりぼっち](2015年 EN MAN SOM HETER OVE A MAN CALLED OVE スウェーデン 116分)

 アマゾンプライムで。これはシネリーブル神戸で予告を観たような気がする。一言、身につまされる。ラストはやはり「死」しかないところも、人間の人生である限り仕方のないことだろう。その死の瞬間は、独りではあったが、その胸の上にネコが乗っかっていてくれたのはホッとさせてくれる。

 監督はハンネス・ホルム。初見。1962年生まれ。主役オーヴェはロルフ・ラッスゴードで役と同じ59歳。しかしずいぶん老けて見える。メーキャップのせいもあるかもしれないが。

 半年前に58歳の妻をガンで亡くし、失意の毎日を送っている。一日も早く死んで、妻の元へ行きたいと願う日々を。四度、自殺を試みている。そのつど邪魔(?)されるわけだが、その時々に関わりを持った人たちとの人間関係が生まれていく。本人には不本意なことのようだが。

 中でもイランから来た女性パルヴァネ(バハール・パルス)と夫・女の子二人の家族との関わりがメインとなっている。そして野良猫。やはり子供と動物だ。頑ななオーヴェの心を開いていくのは、パルヴァネとその二人子どもたちだ。

 最後の方のオーヴェのパルヴァネへの述懐で、初めて彼は子どもを事故で失ったことが分かる。そして妻ソーニャ(イーダ・エングヴォル)も車椅子生活に。教師の資格が取れても、車椅子のせいで仕事ができないという、これがスウェーデンかと思わせられるシーンが何度かある。いずこの国も、なかなかであったということか。

 ソーニャの教え子だった青年も現れ、生前の妻のことを思い出す。日々、おそらく毎日、妻の墓に詣でていたようだ。そして話しかけて。

 パルヴァネの赤ちゃんが生まれ、ことがすべて収まったところで終焉を迎えることに。死ぬ間際の一瞬の彼の夢は、列車内でソーニャと顔を見合わせ、手を握り合ってというもの。

 なお原題は、「オーヴェと呼ばれた男」ということでいいのだろう。邦題は皮肉かと思えるほど。不幸とまでは言わなくても(たいていの人生はそういうものなので)、かなり幸せからはほど遠いものであったと私には思われる。

 あと、こだわりの面白さでは、車のことがある。オーヴェは父親の代からサーブ一筋。だから同じスウェーデンの車なのにボルボをくさす。パルヴァネが車の練習を彼から教えてもらっている時、ボルボにちょっとぶつけるのだが、ボルボだからいい、と言っている。スウェーデン製ですらそんな態度なので、ルノーやBMW・アウディなどにはぼろくそであった。

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