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楕円の曲線美 松濤美術館

休みなくその『谷』に多くの人が往来し、空気も澱んだこの場所を通過することを考えただけで気分が重くなる。
半分息を止めたかのような感じで、勢いつけて人の海を掻き分けながら交差点を渡る。
風渡る郊外での仕事や暮らしが長くなると、若い頃は『胸躍る街』も今となっては『とにかくこの場から離れたい』という場所になってしまった。

『人混み嫌だなあ、遠いな』と思いながらも年に何度かはコンサートやギャラリーに訪れていた『東急Bunkamura』も改修工事に入り、時代の移り変わりを感じる。

そしてBunkamuraを過ぎると途端に今までが嘘のような静寂が訪れた。
松濤エリアにある渋谷区松濤美術館を訪ねる。

エントランス入ってすぐ、チケット売り場の天井にまず心を掴まれた。
建築家『白井晟一』さんの作品と知っていたものの、ディテールまでじっくり注意して鑑賞したのは今日が初めて。
この先どうなっているのかワクワクが止まらなかった。

エントランス

こちらの美術館は1980年に完成、1981年に会館らしい。
約40年前ということだ。
展覧会の鑑賞もそうだが、この建物の美しさに触れるタイムスリップに期待感が膨らむ。

建物は、吹き抜けの中央に水があり、角フロアでは吹き抜けからの光が差し込む。あの街の澱んだ空気を吸い込んで浄化するような別の空間が現れる。

吹き抜け

そして、ここでも唸ってしまったのは、この『螺旋階段』。
展示会の鑑賞が終わっても何度も上下行き来した。見上げてばかりいたら階段で後ろに転けそうにもなった。

螺旋階段
螺旋階段

この螺旋階段同様、撮ってきた写真を改めて見直すと建物全体に『楕円』というモチーフが各所にあったことに気づく。
チケット売り場の窓口、1Fのロビーの窓。

1Fロビーの窓

そして鏡まで楕円。

コンクリートに角の取れた『木』のサインも昔を感じる。

サイン

個人的にはスペースの広い圧巻な近代建築の美術館よりも、少し時間を経た建物の方がじっくり落ち着いて作品の鑑賞できる。
また、きゅっとまとまったコンパクト感は、作品をより近くに感じられるからだ。

この素敵なこの空間で杉本博司先生の展示会を鑑賞できて、この日は思いがけず+αのついた有意義な時間を過ごすことができた。

さて、またこの空間から一歩出てしまうと喧騒に呑まれてしまう。
余韻が消えてしまわないように、深く深くの地下鉄駅まで足早に行くとしよう。


追記
地下鉄で風が流れる場所まで逃げるように戻った。
なぜかこの日は『オムライス』が食べたくてしょうがなかったので、いつもの場所でランチ。
そういえばこの形。先ほどまで美しい曲線ばかりを見ていたせいだろうか。

HOTEL NEW GRAND  THE CAFE のデミグラスソースオムライス

ふわーんとバターの香りとともにお皿からはみ出そうな大きなオムライスが運ばれてきた。
あまりの美味しさに3/4まであっという間に進んだが、そこから先は休みつつ。こんな美味しいものは残してなんかいられない。
聞いたてみたところによると卵を4個から5個使用とのこと。
スイーツ返上で完食。

確か『シーフドドリア』の時も、途中で手を挙げそうなくらい胸いっぱいになったし、この前のハーフサイズのチョコレートパフェも途中からペースが落ちた。
でも美味しいもので胸いっぱいは何より幸せなことだ。
このシアワセをいつもありがとうございます。

ハーフサイズのチョコレートパフェ





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