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竹の花が咲く 夕陽の別荘改装録20〜21

『こうして見ると俺たちカッコいいことしてるように見えるよね。』
と仲間の一人が偽ビール片手に言った。
日差しも強くなり、いよいよテラスにもタープが必要になってきた。
初夏の陽気の中、汗を拭きながら午前中の作業を終えて私たちはテーブルに着く。
汗で蒸れた長靴を一旦脱ぎ、顔に泥がついていないかどうか、タオルで拭き取る。そう、一見カッコいいけど、皆汗まみれ、泥まみれだ。

テラスでランチ

前回のオーナー特製、ブラジル仕込みの『シュラスコ』に引き続き、本日も豪華イタリアン、ボロネーゼ。毎回、料理上手の仲間の一人が準備してくれる。
午後の作業に備えて、すぐエネルギーに替わる炭水化物はありがたい。
レモンの風味のキャロットラペの酸味は、疲れをリフレッシュさせる。
『ご馳走様でした。』
あっという間に『完食』だった。

ボロネーゼ、キャロットラペ

一息ついて、海から吹き上げるやや潮混じりの風を浴びながら、テラスの上から庭を見渡す。
シロツメクサやタイムなどのグランドカバーも今のところ少しづつエリアを広げながら、順調に拡大。
あの『葛の森』がここまでになるとは。
『ああ、いいなあ』と、ひとときの満足感にひたる。
食事と同じで製作時間より、眺める時間の方が圧倒的に短いもの。

グランドカバーも順調

『葛の根』は、何処までも伸びて深い。
秋に撤去した葛の根の上部に再び『コブ』ができ、春にそこからまた新芽を伸ばし始めていた。また少し深く掘って、切り出している。他にも『仙人草』の新芽。これも貼ったばかりの芝シートを下から持ち上げながら、元気に吹き出してきた。
この土地の断面で切り取ると、きっと根が縦横無尽に違いない。

さて、こうしたテラスでのひととき、4月からよく話題になっていたのは、土地側面、境界部分の『竹林』だ。
春は『竹の秋』とも言われ、落葉し、また新しい葉を出すものだが、5月になっても一向に元気がない。竹の色はシルバーグレーのまま、緑の葉っぱも見えない。

枯れゆく竹林

これは、最近、TVでも話題になっていた、『竹の花』が原因なのでは?と竹林に寄ってまじまじと観察。
やはり。花が終わった花がらのようなものが付いている。
そして、地面からはこの春、『筍』が一本も出ていない模様。

竹の花

竹の花が咲くと竹林全体が枯れてしまうそう。
そして竹の花が咲くのは、120年位の周期らしい。だから『不吉』などと言われることもあるが、それが植物のサイクルだからしょうがない。あまり気にしていない。
むしろ早々出会うことのない、タイミングに出くわした事に『へえ』と関心、感動してしまうもの。

事実を歪めた『映え』や、AIによるフェイクニュース、ChatGPTが出してきた答えが気づかないうちに基準になっているような今だからこそ、こうしたありのままの自然に直面した時、より感動が際立つのだろうと思う。

こうした想像し得なかった出来事に何かを感じた瞬間こそが、それが生きているという実感なのかもしれない。
そこからまた、何かを知り、何かが始まることもある。

まずは、ここの庭の当面の問題は『終わりなき雑草との戦い』。
また、きっと必要になってくる、冬の『竹の伐採作業』が加わることを想像すると、少し気が重くなるが、不思議とそこもポジティブに『やってみようか』という気持ちになるのだ。

そして、私たちは満腹の胃袋で重い腰を上げ、また長靴を履いて午後の作業に取り掛かった。


追記
こちらはペパーミントグリーンの美しい『オオミズアオ』という掌より大きな『蛾』。
竹林の寿命は120年位だが、この蝶は、幼虫の時は口があるので食事が取れるが、羽化するとなんとも可哀想なことに口が無くなってしまう為、寿命は1週間ほどらしい。
この2週間で生命、自然の不思議にまた出会ってしまった。
しかし、その出会うタイミングの希少さから、こちらは『幸運を招く』とも。
『果たして吉なのか、凶なのか』、人間って、身勝手なもの。
5月中旬がちょうどその時期。
昨年に続いて今年も出会うことができた。

オオミズアオ 2022年撮影
オオミズアオ 2023年撮影

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