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ドクダミ草

梅雨時、雨が降りそうで降らないような曇りの日。
気圧段々が低くなると肩にじわじわと重みを感じ、気持ちも段々塞がってゆく。降り出してしまえば、なんとなく楽になる。

小雨が降り出した。
気分転換に外へ出る。
今年も、庭には一面のドクダミ草だ。

ドクダミ草

暗くて陰鬱なイメージ、独特の香り。
大抵の人々は嫌う庭の雑草だ。

しかし私は、このドクダミ草が好き。
雨に濡れた一面のドクダミ草は、美しくてため息が出る。
白い襟の修道女たちが祈りを捧げているかのよう。
少し、茂みに立ち入り、写真を撮る。
葉とすれ合った足首から、独特の香りが立ち登ってきた。

今年も少し持ち帰り、古道具にいけた。
写真を撮り終えた頃には、不思議と気持ちも明るくなっている。
これが植物の持つ力か、またはドクダミで解毒されたのか。

古道具とドクダミ草

案の定、翌日の夕方同じ道を通ると、ドクダミは全て刈られていた。
まだまだ眺めていたかったから残念である一方、刈り取られた場所に顕になった土を見て、ある種の『潔さ』も感じた。
また来年、逢いましょう。
そんな小さなささやきが何処かから聞こえたようだった。


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