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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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#植物

秋のブーケ 私の花仕事

私が、もうかれこれ13年もの間、担当している花の仕事がある。 花の通販サイト『花問屋アソシエ』さんでの『花レシピ』の製作と撮影。『うきうき花レシピ』という、気分も揚る名前をいただいている。 毎月一回、季節の花の紹介とそれを使った作品を製作し、撮影する。 事前にデザインを決めて、花材を発注。 当日は丸一日かけて8作品程度製作しながら工程を撮影していく。 今年からは動画撮影も加わり、どうお見せしたらいいいか工夫しながら、スタッフ皆で試行錯誤しながら進めている。 特に、プロのカメ

お庭探訪 山下公園、港の見える丘公園 

最近、想定外の事態に見舞われ、その収集に追われて疲れもピーク。 それでも、リビングのカーテンを開けて雨の朝、しっとりとしたバルコニーの植物を見ると心が安らぐし、晴れた日は小さなベンチでハンドドリップの珈琲をいただくと、短い時間でも自分に帰れる。 植物に囲まれていれば幸せなのだ。 改めて、自分の心を整えてくれる庭の大事さを知る。 さて、今日は、気分転換も兼ねて、最近の庭づくりで参考にしている場所のお話をしようと思う。 山下公園付近の植栽と港の見える丘公園のローズガーデン。 こ

梅雨の植物たち タシロラン

いよいよ梅雨明け間近。 梅雨入り当初は気温がまだ高くなかったので、雨に濡れた植物を観察するのが一つの愉しみだった。 雨に濡れた美しい葉っぱ、水滴の付いた蜘蛛の巣、あれもこれも綺麗だなと夢中になって雨上がりに庭に踏み入って撮影&観察していたら、『ブヨ』と『アシナガバチ』に刺されてかなりのショックを受けた。 アシナガバチに至っては、刺されて6時間で腫れが引いてやれやれ一安心。しかし、何故か1週間後にまた腫れがぶり返し、さらに3日も続いた。 やはり、自然は優しいようで、厳しいものだ

夏の百合 その場所で咲くこと

先週のお稽古で使った向日葵は、やはりこの猛暑であっという間に枯れてしまった。いけられた花は、夏は特に長持ちしない。 これまで季節がなんであれ、花をいけることを当たり前に続けてきた。 しかしこの数年、植物の自然環境下での生き生きとした姿、在り方を注意して見つめるようになり、その面白さに惹かれるようになった。 最近は、生産された花をデザインしていけることが少し辛くなることがある。 ただ、美しいという花よりも、それぞれの環境下での『姿や在り方』を見つめる方が愉しい。 山百合。

ふきのとう

『そろそろ出てきてないかな、ないかな』 今朝も冷え込み、霜が降りていた。 いつもの裏路地を歩きながら、『見つけた!』 この黄緑色の塊には、毎春心踊らされます。 蕗の薹(ふきのとう)、菜の花、さやえんどう。 冬の寒さが終わる頃には、黄緑色の野菜が多い気がします。 黄緑色は春の色。春をいただくのです。 今日は、山茱萸の枝と共に片口にいけました。 蕗の薹は、日本に古来から食用とされてきた植物だそう。 蕗の薹、ゼンマイ、土筆など、初めて食べようと思った人たちはさぞかし勇気がいっ

シュールな黒い花

私は、白い花が好きだ。 年間を通じて多く撮影している。 特に花弁が透けるような白い花。 それは、逆光で撮るとその質感がよく見えてくる。 堅そうな花弁なのか、今にも壊れそうな花弁なのか。 触れてみたいと思わせる。 では、黒い花。 厳密に言うと真っ黒な花はない。 大体が黒に近い濃い茶色か濃い紫。 撮影すると大抵黒潰れする。古いフィルムカメラだと特に調整不能。 輪郭しか残らず、なんだかわからなくなる。 でもあえて撮ったままにしておく。 ちょっとシュールで、惹かれてしまうから。

冬のクレマチス

先週の雪は、翌日あっという間に消えた。 その後、雪のような白いベルが一斉に開花し始めた。 冬に咲くクレマチス、クレマチス・アンスンエンシス。 別名ウインターベルだ。 蔓の節ごとに仲良く2つのコロンコロンとした花をつけている。 北風に共鳴し合う無数のベルたち。 クレマチスが好きで、数年前から育てていたものの、上手く花を咲かせられなかった。 冬のお散歩コース、他のお宅のフェンスにたくさん花を咲かせているのを見るにつけ、とても羨ましかった。 昨年の夏は、なるべく直射日光に長く

凛とした佇まい 日本水仙

友人の古民家、庭先の水仙。 まずは水色の空き瓶にすうっと一本、納屋の片隅にいけてみた。 この「すうっと一本」が、一月のイメージ。 年末からお正月の賑わいも過ぎ、冬の静けさが訪れる一月。 別名「雪中花」とも言われるように、凍えるような大地を割って、ゆっくりと花芽を伸ばし、花を咲かせる。柔らかな茎や葉からは想像できない、強い生命力を感じる。 花の大きさや、黄色や白と『スイセン属』と言われる水仙の種類は色々。 とりわけ、柑橘系にも似た爽やかで品の良い香りと、素朴であるが凛とした

1月の古民家だより 冬イチゴ

『ほら、冬イチゴ。』 暮の戸外での昼食準備中、古民家に住む友人が、庭から摘んできた野苺を片手に、『焚き火も用意できたから』と台所に戻ってきた。 小さな実を枝からそっと外し、冷蔵庫からバター、フライパンをガスにかけ、手際良くあっという間に『甘酸っぱい苺ソース』の完成。 『炭火焼の鴨に合うんじゃないかな。』 その苺は、外のテーブル脇の石垣に生えていた。 それは、ひっそりと葉っぱの下に隠れながら蔓の先に小さな実をたわわにつけていた。 陽にかざすと透き通るような美しい赤。 『器に