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花譜

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四季の花や植物との出会い。古道具と花、写真で綴る短いエッセイ。
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2022年1月の記事一覧

ミモザの記憶

ミモザの花は、昔から好きでな花で、幾つか思い出がある。 一番印象に残っているのは、スペイン旅の途中、まだ一月なのにアルハンブラ宮殿の庭に咲いていたミモザ。揺れるミモザの枝とその背景は、まるで夢を見ているかのようだった。 今手元に写真がないことが、余計に記憶をくすぐるものだ。 次に、神奈川の内陸から湘南に転居したきた際に、地植えでも育つミモザを見て感動した。 当時働いていた生花店の店先のスペースにミモザの木を植え、それは翌年、翌々年とスクスク育ち、黄色の花をたわわに咲かせた。

冬のクレマチス

先週の雪は、翌日あっという間に消えた。 その後、雪のような白いベルが一斉に開花し始めた。 冬に咲くクレマチス、クレマチス・アンスンエンシス。 別名ウインターベルだ。 蔓の節ごとに仲良く2つのコロンコロンとした花をつけている。 北風に共鳴し合う無数のベルたち。 クレマチスが好きで、数年前から育てていたものの、上手く花を咲かせられなかった。 冬のお散歩コース、他のお宅のフェンスにたくさん花を咲かせているのを見るにつけ、とても羨ましかった。 昨年の夏は、なるべく直射日光に長く

凛とした佇まい 日本水仙

友人の古民家、庭先の水仙。 まずは水色の空き瓶にすうっと一本、納屋の片隅にいけてみた。 この「すうっと一本」が、一月のイメージ。 年末からお正月の賑わいも過ぎ、冬の静けさが訪れる一月。 別名「雪中花」とも言われるように、凍えるような大地を割って、ゆっくりと花芽を伸ばし、花を咲かせる。柔らかな茎や葉からは想像できない、強い生命力を感じる。 花の大きさや、黄色や白と『スイセン属』と言われる水仙の種類は色々。 とりわけ、柑橘系にも似た爽やかで品の良い香りと、素朴であるが凛とした

春の囁き クリスマスローズ ニゲル

『あ、花芽がついている』 12月中旬の庭仕事中に、落ち葉に埋もれた株の下に、白い蕾が少しだけ顔を覗かせていた。 作業中踏まれないように、枝の支柱で目印をつけてそっとその場を離れた。 クリスマスローズは、『ニゲル』と一般的な交配種の『オリエンタルタリス』に分かれ、早咲きのニゲルは、その名の通りクリスマスの頃に咲き始める。クリスマスローズ・ニゲルは(ヘレボルス・ニゲルの英名)だそう。 真冬に咲き始めるニゲルは、透け感のあるオリエンタリスの花弁に比べてやや肉厚。 また、俯き加減の

1月の古民家だより 冬イチゴ

『ほら、冬イチゴ。』 暮の戸外での昼食準備中、古民家に住む友人が、庭から摘んできた野苺を片手に、『焚き火も用意できたから』と台所に戻ってきた。 小さな実を枝からそっと外し、冷蔵庫からバター、フライパンをガスにかけ、手際良くあっという間に『甘酸っぱい苺ソース』の完成。 『炭火焼の鴨に合うんじゃないかな。』 その苺は、外のテーブル脇の石垣に生えていた。 それは、ひっそりと葉っぱの下に隠れながら蔓の先に小さな実をたわわにつけていた。 陽にかざすと透き通るような美しい赤。 『器に