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告白水平線

あの水平線の向こうに彼がいるのね。彼女は毎日のように水平線の向こうを眺めて思いを馳せる。

水平線の向こうに彼女はいる。嘘じゃないさ、俺は目があったんだ。彼女も俺のことに気がついているんだ。この前なんて微笑み返してくれたんだ。

「水瓶座星系で事故があったって?」
「ああ。どっかの馬鹿が飛び込んたらしい」
「飛び込んだって、ブラックホールにか?」
「そう。なんでも『水平線の向こう側』に女がいたんだ、惚れてしまったから告白するんだって言ってたらしいぜ」
「たまにいるんだよな、観測しているうちにおかしくなるやつが。しかし水平線か」
「水瓶座だからな、事象の地平線ならぬ、事象の水平線ってわけだ」
「そうだな」
「ブラックホールの向こう側は何しろ時間の流れが違うからな。光すら逃げられない牢獄だ。そこでの認識がどうなるかなんて俺には想像もつかないね」

彼は彼女に会いに行く。
いつの日か。
いつの日か。

彼女は彼を待ち続ける。
いつまでも。
いつまでも。



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