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【140字小説】去りゆくひと

「ねえ、お願い。行かないで」
懇願する私に対し彼は目尻の皺を深くして困ったように微笑む。
「すまないね、そういうわけにはいかないんだ」
定命の人はいつも私を置いて行ってしまう。私の腕の中で目を閉じ、さらさらと片端から砂のように崩れてゆく彼の表情は、少しほっとしているようにも見えた。

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