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【ショートショート】輝け、願い

 暗くなりかけた冬の道を、幼馴染のトモヤと二人で近所の神社に初詣に向かう。もう中学生だから恥ずかしさもあるのだけど、昔からの習慣だからと今年もトモヤは誘いに来てくれた。照れ隠しにぶっきらぼうな返事をしながら、実はあらかじめ決めてあった一番お気に入りの冬服を着て出かける。
 いつものようにお参りを済ませた後、おみくじを引こうとしたところでトモヤが言う。
「へえ、夜光おみくじだって。なになに、願いの強さが強いほどその項目が明るく光ります……面白そうじゃん、これにしようよ」
 二人で順番におみくじを引く。
「ユカリはどんな結果だった? 見せてよ」
「やだよ、恥ずかしいもん」
 こちらの手元を覗いてくるトモヤから逃げる様にして、私は慌てておみくじを手に握りしめる。
「恋愛」が一番強く光っているのを、見られてしまっただろうか。
 しつこくこちらを覗きこんでくるトモヤの手元のおみくじでは、「恋愛: 待ち人 すぐそばにあり」という文字がキラキラと輝いていた。


お題:「夜光おみくじ」


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