手書き英作文をAI添削させてみた②【生徒の反応】

前回の投稿で、生徒が手書きで書いた英作文をDeepL Writeを使ってAI添削にかける方法を紹介しました。手書きの作文をWeb上に載せる方法として、

  • キーボードのタイピングで手打ち

  • 音声入力による文字起こし

  • 画像認識(Googleレンズ)による文字起こし

この3つの方法のいずれかを生徒に紹介しました。そうしてDeepL Writeにエッセイを添削にかけて、AIによる指摘、修正候補を採り入れるべきか判断しながら自分のエッセイに反映させました。

本稿では、この一連のプロセスを体験した生徒たち(高校1年生)の反応を紹介します。以下の反応は、授業の最後にアンケートによって集めたものを私が集約・要約したものです。

どの方法が使い勝手が良いか

まず、今回紹介した3つの文字起こし方法のうち、どれが自分にとって使い勝手がいいと思うか答えてもらいました。アンケート項目の集計では、

  • キーボード 40% 

  • 音声入力 20%

  • 画像認識 40% 

という結果でした。

それぞれの項目を選んだ理由をいくつか紹介します。

キーボードでのタイピング入力

  • タイピングができるようになりたいから。

  • 他の2つよりも速い。

  • (他の2つのように)正しく認識してもらえないということがない。

  • 綴りが覚えられる。

元々タイピングに慣れ親しんでいる生徒以外にも、これから慣れていきたいという生徒が練習のためにタイピングを選ぶと回答しました。

音声入力での文字起こし

  • 音読の練習になる。

  • 発音の確認になり、発音がわからなかったものを調べることにつながる。

今回3つの中では使った生徒が最も少なかったようですが、発音・音読の練習になるという学習効果に関するコメントが多く、英語学習へのモチベーションが高い生徒にとっては強力なツールであると感じます。

ただし、教室で一斉に作業をする際には周りの声も認識されてしまう、というデメリットに言及する生徒も少なからずいました。

Googleレンズ画像認識からの文字起こし

  • 写真を撮って手直しをするだけでラク。

  • 文字数が多いときは特に作業が省ける。

  • 一番速い。

  • 手書きの字をきれいに書こうと心がけられるから。

何よりも写真を撮るだけという手軽さが人気だったようです。実際には改行の手直しをしたり、うまく読み取られなかった部分を修正したりする手間がかかるはずですが、それを差し引いてもこちらの方がタイピングよりも速いと感じる生徒が多かったようです。また、正しく認識してもらえるように手書きのときに字を丁寧に書くように心がけたいという意欲あるコメントもありました。

今後、手書きとタイピングどちらを使うか

今後、今回のようにAI添削を利用するためにWeb上に自分のエッセイを入力しなければならないとして、音声入力や画像認識のツールを使えばよいので手書きでエッセイは書くか、それともそんなことをするくらいならはじめからタイプした方がいいと思うかを尋ねました。

結果、「はじめからタイプした方がいい」と答えた生徒と「手書きの方がいい」と答えた生徒は、ほぼ同数でした。

タイピングを選択するという生徒のコメント

  • タイピングの練習は今後のために必要。

  • 修正がしやすい。

  • 手間が省ける。

  • 電車内などでスマホ片手にでもできる。

手書きを選択するという生徒のコメント

  • タイピングが苦手だから。

  • 手書きの方が単語の綴りや文の構造を覚えやすい。

  • 手書きがちゃんとできてこそ英語ができると思う。

  • 実際に書くことで身につく能力を感じる。

  • タイピングだとそちらに集中してしまい、作文に重きを置けないから。

  • (音声入力や画像認識が)意外と正確だったから。

  • 入試が手書きだから。

手書きの方がラク、タイピングの方が二度手間にならず済む、のようなコメントばかりかと思われましたが、そのような短絡的なコメントだけでなく、利便性や学習効果に言及した生徒が多かったのにはやや驚きました

AI添削について

最後に、今回使ってみたDeepL WriteによるAI添削についてのコメントを紹介します。「良かった点」と「注意すべきと感じた点」に分けてコメントを求めました。

AI添削の良かった点

  • 簡単なミスだけでなく、複雑な文章も想像以上に理解してくれた。

  • 自分では気付かないミスを指摘してくれる。

  • 他の言い回しを提案してくれて、色々な表現を知ることができた。

  • 一人で学習することができる。

  • 単語などの細かいところだけでなく、一文単位でより良い文を提案してくれる。

  • 瞬時に添削してくれるので、書いた記憶のあるうちに誤りに気付ける。

以上のような肯定的コメントがありました。総じて、誤りを直してくれるといったproduct-basedなコメントだけでなく、自分では思いつかなかった表現方法を提案してくれるといった、AI添削が学びに役立つという認識のコメントが多かったようです。AI添削の可能性を感じさせるコメントです。

AI添削で注意すべきと感じた点

一方、注意すべき点にも多くのコメントが寄せられました。

まず、私が紹介時に強調して伝えた影響もあるかとは思いますが、自分の文章がAIによってねじ曲げられてしまう可能性に言及したコメントが多かったです。

  • AIに文章を乗っ取られる。

  • 文章をねじ曲げられるかもしれない。

  • 自分の意図した意味とは違う単語に直してくる。

  • ニュアンスや文脈を踏まえての解釈ができないこともあるので、鵜呑みにすると本来の意図が伝わらない文章になるかもしれない。

自分の意図とは異なる表現を提案されてしまうという点は、多くの生徒が実感したようです。また、

  • 教科書本文からの表現さえも変えられてしまう。

というコメントもありました。これは、「せっかく学んだ単語を使ってみたのに」という学習者の心情を考えると残念なところです。せっかくinputで得たものをoutputで積極的に使ったことが(AIには)認められず、その後の活用への影響が心配になります。

学習者心理への影響という観点では、

  • 直されたところが間違っているとは限らなかった。

というコメントも気になりました。AI添削としては、より読みやすい表現を提案しているのでしょう。しかし、訂正フィードバックはただでさえ学習者への心理的負担となるのに、誤りと認める必要のない箇所を「訂正」されることの学習者への心理的影響には注意が必要でしょう。「なぜ直されたのかわからないことがある」といったコメントもあったので、学習者の表現意欲を削ぐようなことがないよう、教師が注意してモニターしてやることが必要と感じます。

以下のコメントからは、使いこなすにはある程度の英語力が必要ということを生徒たちが実感をもって経験したことがわかります。

  • 添削されたものが正しいかどうかの判断を自分でできなければ使いこなせない。

  • 自分が文法を理解していないと成立しない。

また、学習効果に懐疑的なコメントもありました。

  • AIに任せっぱなしになってしまう。

  • 何を間違えたか教えてくれるため、根本的な英文法が定着しない。

これらは、AI添削が学びに役立つという肯定的なコメントと相反するもので、学習者によって捉え方が180度異なることを示します。興味深い点だと思います。

最後に、こんなコメントもありました。

  • 一件だけ文法ミスを指摘されたがそれ以外に指摘がなく、添削が雑だと感じた。

これに関しては、当該生徒の英作文をチェックしましたが、全体的に意味が伝わりにくい文章でした。おそらくDeepL Write側が文章内容を理解できず、添削できなかったのだろうと思います。

もう少し詳しく検証する必要がありますが、DeepL Writeでは単純な文法、語法面での誤り指摘はしてくれますが、全体的に「何を言っているのか分からない」とか「構文上、成立していない」のような、そもそも直しようがない類の誤りについては、訂正を提案できずにスルーしてしまうのかもしれません。もしそうだとすると、学習者側からすれば、「AIから誤りを指摘されなかった」=「伝わった」「正しい」のように短絡的に捉えてしまうと大きな問題につながりかねないところです。改めて、ある程度の英語力がないとAI添削は使いこなせないことを示唆しているようにも思えます。

今回使わせてみて分かったこと

今回試しにAI添削を使わせてみて、生徒の反応から様々なことがわかりました。メリットだけでなくデメリットへのコメントがたくさん寄せられたことは、もちろん使い方に注意が必要であることを示すものですが、同時に、一度試しに使ってみただけでこれだけのことに気付けるということは、生徒たちはそれなりに節度を持って、注意しながらAIを使いこなしていく潜在能力があるのだとも感じさせられます

また、AI添削のデメリットを考えることで、教師の果たすべき役割が見えてくると思います。AIに対して、人間の教師をnon-AI teachersなんて呼ぶ日が来るでしょうか。NEST (native English-speaking teachers) と Non-NEST (non-native English-speaking teachers) の議論のように、AIとnon-AI teachersの果たすべき役割を意識していく日が、もうすぐそこまで来ているかもしれません。

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