ライティング問題の採点効率を上げる(採点用ルーブリックのあり方①)

生徒が書いたライティング課題に対して、ルーブリックを用いて評価を行うことがごくごく一般的になってきました。一昔前までは、1つの文法ミスにつき1点ずつ減点していくような採点も行われていましたが、今ではそうした採点は減ってきていると感じます。

採点用ルーブリックのあり方は、それが用いられる場面や目的に応じて異なって然るべきです。授業における言語活動・タスクに対する評価に用いるルーブリックであれば、まず学習者への指針となることが求められます。また、学習者が受け取った評価をもとに十分な内省が行えるよう、ルーブリックの記述に工夫をしておきたいものです。

一方、定期考査のような状況で課されるライティングの評価に用いるルーブリックでは、求められるものが異なります。

定期考査のライティング問題用の採点ルーブリックを作る際、私は以下のことを優先に考えています。

  1. 採点効率

  2. 公平性(授業担当者間の差違への対応)

  3. 返却時の生徒自身の内省

  4. 汎用性

まず、この投稿では、私が最も重視している採点効率を上げるための採点ルーブリックについて考えます。

採点効率を高める採点ルーブリック

定期考査の採点ルーブリックを考える際に、私が最も優先して考えることは採点効率です。定期考査などでライティング問題を出題する際、一番大切なことは出題し続けることだと思っています。そして、その採点に関して最も避けるべきは、採点が粗くなってしまうことでも、フィードバックが不十分になってしまうことでもなく、採点を億劫に感じて定期考査でライティング問題を出題しなくなってしまうことだと考えています。

何十枚、場合によっては100枚以上のessay writingを採点するにあたって、できるだけ一枚一枚の採点に時間がかからないように工夫をしたいものです。私は、採点効率を高めるために、以下のような工夫をしています。

1.評価規準を絞る

評価項目が多いとそれだけ採点に労力がかかるため、私は多くても3つの評価観点に絞っています。「課題の要求に応えているか」「論理的な構成になっているか」「文法語法面で読み手に負担をかけるところがないか」といった3項目にすることが多いです。

2.評価の段階は4段階(実質3段階)とする

評価の段階はABCDなどの4段階が適切と考えます。このうち最低評価のDは語数が完全に不足していて解答になっていない答案用とし、実質的にはABCの3段階評価とすることが多いです。

3.迷ったとき用に各段階の間の点数を設けておく

個人的にはこの工夫は採点効率を高めるのにかなり有用だと思っています。例えばABCDの4段階評価に得点を割り当てる場合、配点に応じて以下のようにします。

(8点満点の場合)
A (8) ー B (6) ー C (4) ー D (2)
(15点満点の場合)
A (15) ー B (11) ー C (7) ー D (3)

ポイントは、各段階の間の点数が取れるように設定しておくことです。例えば8点満点のスケールではAとBの間に7点が存在します。15点満点の例ではAとBの中間点として13点が設けられています。

このように中間点を設けておけば、「迷ったら間の点数」と決めておくことで採点のスピードを高めることができます

4.添削やコメントは行わない旨を明記する

これはかなり大胆な策と思われるかもしれませんが、採点効率を高めるために、定期考査上のエッセイライティングに対しては、原則として添削や個別のコメントを行わないことにしています。そして、その旨を考査案内や問題用紙であらかじめ生徒に伝えておきます

私は、「普段の授業で十分なフィードバックを与えているので、定期テストではすみやかな返却をすることを優先し、添削やコメントは行わない」と、考査案内と問題用紙に記載して生徒に伝えています。特にそれで生徒から不満が出たことはありませんし、もちろん返却後に個別に添削やコメントを求められた時には対応します。

最も大切なことは、出題し続けること

最後の4点目を含め、賛否両論ある部分もあると思います。しかし、自分は何よりも採点効率を重視して、上記のことを念頭に採点ルーブリックを策定しています。最も避けるべきは、採点が粗くなってしまうことでも、フィードバックが不十分になってしまうことでもなく、採点を億劫に感じて定期考査でライティング問題を出題しなくなってしまうことだと考えているからです。

もう少し言うならば、出題する自分自身が採点を億劫に感じることはあまりありませんが、一緒に授業を担当している他クラスの先生が億劫に感じてしまうと、そのことに気を遣わなければならないことが一番のストレスになってしまいます。結果としてライティングの出題にブレーキをかけてしまうことになりかねません。

採点用ルーブリックの工夫と、添削・コメントの手間を軽減することで、採点が大きな負担にならないよう担保しておくことで、定期考査でエッセイライティングの問題をしっかりと出題し続けることができると考えています。

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