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定期考査の採点用ルーブリックの一例(採点用ルーブリックのあり方④)

過去3回の投稿に渡って、定期考査でエッセイライティングを出題した際に用いる採点用評価ルーブリックのあり方について書いてきました。

今回はこのシリーズの締めくくりとして、私がいつも定期考査で使っている採点用ルーブリックを共有させていただきます。

ここで紹介するルーブリックは、あくまで定期考査の採点用です。そして、過去の投稿で書いたように、私が定期考査でのライティングに関して最優先しているのは「採点効率」そして「出題し続けること」です。

本来のルーブリック評価のあり方としては、至らない点が多々あるかと存じます。ただ、穴のないルーブリックを模索して出題が億劫になったり、採点が複雑化して教員サイドの出題への心的ハードルが上がったりするくらいなら、不十分な形でも、なるべく採点に手間のかからない方法で出題をし続けることが、トータルで生徒の英語力向上に寄与すると考えています


採点用ルーブリックの例

私が定期考査のライティングで用いているルーブリックはこのようなものになります。

定期考査のライティング採点用ルーブリック例(10点満点の場合)

このルーブリックは、問題用紙に記載しておき、生徒自身に示しています。また考査案内のプリントなどにも記載して予め示しておくこともありますが、最近はどうせ毎回同じルーブリックなので、事前に示さないことも増えてきました。

評価は実質3段階

ABCDの4段階評価となっていますが、Dは語数が圧倒的に不足している場合や課題と関係の無い解答になっている場合に適用しますので、実際にはABCの3段階評価となります。(Dに関しては、状況に応じて2点か3点を選択、また一文に満たないケースなどには1点を与えることもあります。)

A評価が10/9となっていますが、普段は9を最高点としています。10はめったに与えません。これは、There's always room for improvement. ということを示すためでもあり、仮に文法的にノーミスで、論理的にも欠点のない解答であったとしても、もっと秀逸な表現のしかたというのは常にあるはずで、そういう意味で「満点」というのはごくごく例外的に優れた解答のみに与えることにしています。

迷ったら中間点

実質的にABCの3段階評価なので、簡単に言えば「よく書けている」「まあまあ」「あまりよく書けていない」の3段階評価です。そして、迷った場合のために中間点を設けています

仮に、Aが4点、Bが3点だったりすると、AとBで迷った際にどちらかを選択しなければならなくなります。ここでの迷いが採点時間を圧迫し、採点が億劫になります。しかし、中間点を設定しておけば、「迷ったら中間点を採用」と割り切ることで、採点効率が高まります

上記の場合であれば[9, (8), 7, (6), 5]のように中間点を設けています。これが例えば[10, 7, 4]の設定だと、10か7で迷ったときに9と8の間でさらに迷うことになってしまいます。ですので、中間点は常に一つの数字に定まるよう設計します。

「誰が評価しても」

各段階の記述は「誰が評価しても」から始めています。採点者によって「厳しめ」「甘め」というのは致し方ないところですが、採点時に「どの先生が見ても同じような評価をするだろう」という観点を盛り込むことで、採点者間の公平性を多少は確保できると考えています。

もし採点する教員が、「こんなことにこだわりを持って大きく減点しようとしているのは私だけかも」と思ったら、中間点を採用すればいいだけのことです。これによって採点効率も向上させられますし、答案返却された生徒の目からも、「誰が採点してもこれは問答無用でこの点数(のはず)」という評価には、それなりの納得感が上乗せされるのではないでしょうか。

「課題の要求に応えているか」

同じルーブリックを異なるライティング問題の採点においても使いまわしができるよう、「課題の要求に応えている」という汎用性の高い記述にしています。

また、注釈のところに「課題の要求とは、授業において授業担当者が要求した事柄を含む」と明記してあります。この一言によって、各授業担当者は、他の教員とのすり合わせを過度に気にすることなく、自分が授業で強調した事柄を採点時に強調することができます

例えば、トピックセンテンスの立て方にこだわりを持って指導した先生は、そこを厳しく採点するでしょう。パラグラフの分け方を強調して指導した先生は、そこを厳しく採点して構いません。字を丁寧に書くことを強調したのであれば、乱雑な字で書かれた答案には厳しい評価を出せばよいのです。

そして、「こんなことで減点しようとしているのは私だけかな」と思えば、中間点を採用してマイルドな減点にとどめておけばよいのです。

「読み手に負担をかけるか」

文法面・語法面の評価については、「読み手に負担をかける」かどうかという表現にしています。

よく、意味内容に大きく影響を及ぼすglobal errorと意味内容に支障をきたさないlocal errorに分け、global errorの方を重く減点する、といったやり方もありますが、両者の分類は曖昧な場合もあり、読み手(採点者)によって感じ方も様々です。また、「この類いの文法ミスは何点減点する、この類いの文法はまだ授業で扱っていないから減点なし」のような採点者間の摺り合わせも大変です。

読み手に負担がかかるか否かというのは主観的な表現ではありますが、結局のところ一読して難なく意味内容が理解できればいいはずです。主観的なので採点者間で摺り合わせを行う必要がありませんが、最終的には採点者間の公平性もそれ相応に確保されるはずです。

「全てを満たす」「2つ以上にあてはまる」

望ましい評価規準の記述に対して、すべてを問答無用で満たしていればA、「概ね」満たしていればB、また逆に、望ましくない評価記述に対して全てに当てはまってしまえばD、二つ以上に当てはまっていればC、という評価にしています。

個人的には、B評価で「概ね」とぼかした表現にしていることがポイントです。3つの評価項目をすべてある程度満たしている場合にも、あるいは3つの評価項目のうち2つを満たしている場合でも、どちらも「概ね満たしている」と解釈することができます。(望ましい評価規準を1つしか満たしていない場合、それはCにある望ましくない評価記述の2つに当てはまることになり、C評価以下となります。)

添削・コメントは原則としてしない

最後に、定期考査のライティング問題においては、添削やコメントは原則として行わない旨を評価ルーブリックの注釈に明記しています。

このように明記しておくことで、採点や添削の労力を嫌ってエッセイライティングの出題ハードルが上がってしまうことを防ぐことができます。

また、実際に定期考査で書かせたライティングで見られたエラーに対して添削を行ったとしても、その修正内容が学習者に定着するとは思えません。そもそも定期考査というプレッシャーの中でのことですから、その誤りはerrorではなくmistakeであることも十分に考えられます。いずれにせよ、定期考査のライティングに対してwritten corrective feedbackを行うことは、あまり労に見合わないと感じています。

持続可能なライティング評価を

冒頭で書いたとおり、最も大切なのはエッセイライティングを定期考査で出題し続けること。そのために採点にできる限り時間と労力がかからないようにすることを優先事項としています。

こんなルーブリックではあまりにも雑な評価で生徒がかわいそうだ、という批判もあるかもしれません。私は、完璧な評価・フィードバックなどそもそもない、そして、一つのエッセイに対して綿密的確な評価を与えるよりも、多少雑な評価でもいいから2つのエッセイに取り組ませた方が、生徒の力は伸ばせると考えています。

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