赤川次郎の、復刊が熱い①
黄色ネジです。今日は趣向を変えて久しぶりに本の紹介をしてみようと思います。みなさん、最近良い本に巡り合えましたか?今日ご紹介する本は、赤川次郎先生(以下赤川先生)の『黒い森の記憶』です。この不朽の名作が2018年に復刊されたので、改めて未読の方にオススメしたいと思います。それではいってみましょう。
どんなジャンルの本?
この『黒い森の記憶』はミステリーに部類するもので1983年に発行されたものです。赤川作品の中では比較的初期の作品になります。赤川先生と言えば「幽霊列車」、「三毛猫ホームズ」シリーズ、「セーラー服と機関銃」などと言った数々の名作を書かれたベストセラー作家ですよね。
赤川先生の書籍化された作品は500冊を超えています、驚異的な執筆力!。70歳を過ぎた現在も創作意欲に衰えが見られない、まさに日本を代表される作家です。赤川作品だけで一つの本棚が埋まりそうです。
作品は主にミステリーが多いですが、青春ものから、ホラー、恋愛、コメディー、SFまで手掛けておられます。まさに日本のスティーヴン・キングですね。
赤川作品の最大の特徴は、読みやすく軽快なテンポの文章にあると思います。読みやすいし展開が早いからついつい続きが気になって、あっという間に一気読みしてしまう方も多いはず。読書が苦手な方にもオススメです。
私もその読みやすいタッチに魅了された一人で、三毛猫ホームズシリーズを図書館でよく読んでいました。
本作はまだパソコンもスマホもない時代なので、違和感も覚える方もいるかもしれません。
でも、安心してください、設定やストーリー展開が面白くて全く気になりません。
さてそんな親しみやすい赤川作品ですが、本作は異色な存在だと私は位置付けております。
いつもの軽快な作風とは打って変わりこの『黒い森の記憶』は非常に重々しいのです。この重々しさが常に作中を支配して息苦しさすら感じます。何かに付きまとわれた様なじっとりした恐怖。
明らかにいつもの赤川作品ではないのです。赤川作品によく登場する個性真逆のデコボココンビも、軽快なジョークもありません。赤川作品を多く読まれる方ほどその違和感を感じるでしょう。
でもそんな赤川テンプレートを知り尽くすファンの方たちにこそ本作を読んでいただきたいのです。
この『黒い森の記憶』を読んだ私の感想はシンプルに「怖い」でした。でも謎多き老人の行く末がついつい気になってしまう、そんな素晴らしいミステリー小説だと思います。
それでは簡単にこの本のあらすじと概要に触れていきましょう。
『黒い森の記憶』のあらすじ
この作品は町はずれにひっそり建っている山荘が舞台で、主人公はそこに住む60代の老人男性です。物語はこの老人の視点や独白を主軸に展開していきます。
山荘の周りには何もなく、近くの雑貨店へ行くのも車がないと不便な立地。そして少し下っていくと黒い森が不気味に広がっています。
この黒い森こそが主題であり、本作の重要な舞台となっております。
老人は以前は家族と共に都会に住んでいましたが、山荘に移ってから人が変わったように孤独を好んでいます。
人との接触を明らかに避けており、雑貨店から生活必需品や食料をデリバリーしてもらいながらひっそりと暮らしていました。
この老人は物腰がやわらかく、言葉の端々からは高い知性を感じさせます。数年前の退職を機に山荘に移り住み、規則正しく暮らしているようでした。
ただ一点の疑問として彼は外からの訪問を無性に嫌っているのです。
外界から絶たれた山荘で質素で静かな暮らし(電話はあります)。しかしそんな静かな日々が徐々に変化していくことになります。
彼の住む周辺でなんと『連続少女殺人事件』が発生したのです。警察の捜査が始まり周囲が騒がしくなります。犯人が捕まらないまま周囲の変化にいら立ちを覚える老人。
やがて警察の捜査が山荘周辺までに及び老人は否応なく対応する事となります。事件現場周辺に住むため当然の流れでしょう。
また事件と同じくして『差出人不明の奇妙なプレゼント』が老人のもとに届くようになります。開けてみると最初のプレゼントは女の子の人形でした。
幼い女の子が遊ぶような人形。「なんのつもりだ?」
その後もプレゼントは数回に分けて届くことになります。しかし個々のプレゼントは脈絡のないもので、主体性に欠けていました。
しかしそこには明らかになんらかのメッセージを感じ取れます。
老人は困惑しながらも差出人の真意を計ろうとします。
『連続少女殺人事件』と『差出人不明の奇妙なプレゼント』が同時進行していき、少しずつ老人の周囲を不穏な空気に変えていきます。
家族や旧知の友人が手紙や電話で連絡を取る機会が増え、やがて老人は少しずつ正気を保てなくなっていきます。
そして正体不明の恐怖が老人を取り囲み、静寂は狂気へと変わっていくのでした…
オススメのポイント
この小説は要所の伏線が絶妙で、読者に二つの謎に興味を持たせつつ、展開してます。
① 連続殺人
② 奇妙なプレゼント
そして舞台となる山荘が本当に恐ろしいのです。こんな外界と絶たれた場所で誰かに襲われたら、と想像せずにいられません。
そして少し読み進めていったらすぐに気づくと思いますが…
この老人まともじゃないのです。
言動がおかしいと言う意味ではないのですが、なにか深い闇を感じさせます。物騒な殺人事件を機に、友人や家族が一時的に都会へ帰るよう忠告しますが、彼は決して動こうとしないのです。
人を飲み込む「黒い森」に魅了されるように、老人は山荘にひっそりと住み続けるのでした。
本作はホラーテイストを含んだミステリー小説です。物語はこの『連続少女殺人事件』と『差出人不明の奇妙なプレゼント』を同時進行で追っていくことになりますが、決して複雑ではありません。
登場人物もそんなに多くはないのも読みやすい理由の一つです。そして謎の解明が納得いく形で描かれていきます。
移動手段や連絡方法などはあるのですが、老人が黒い森に縛られているので、広い意味でクローズドサークルと言っても良いでしょう。
犯人や展開を予想しながら読むと楽しいかもしれませんね。
『殺人事件』を題材にしているので、少しショッキングな描写もあるので苦手な方は注意してください。
(↑こちらは学生時代にいただいたものです。年季が入っていますが私のお気に入り書庫に入っています。)
タイトルの写真が復刊版のものです。懐かしくて思わず復刊版も購入してしまいました。
最近は「黒い森の記憶」以外にも復刊しているので、また時間があればそちらもご紹介してみたいと思います。
本日もお粗末です。久しぶりに文章メインの記事を書いて、頭使った気分です(^◇^;)。
最後まで閲覧していただいてありがとうございました。明日も素敵な一日をお過ごしください。
🦊「続きが気になるわね」
🐻「やべぇ爺さんだなー」
🐰「1人じゃ無理」
サポートはお絵かきのエネルギーに使わせて頂きます。ありがとうございました😊。