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町の機嫌。

小さい街に暮らしていると、町の機嫌がよくわかる。

今住んでいるのはとても小さな街で、徒歩15分に全部ある。
図書館もスーパーも、パブもレストランも駄菓子屋さんも。銀行も体育館もみんなある。
そんな街にいると、町の機嫌みたいなのがわかりやすくなる。
町の機嫌といっても人の機嫌のことだけど、
町中みんながおんなじような気分になるから、町の機嫌。

晴れの日は、町の真ん中のお菓子屋さんが陽気な音楽をばばんばばんばんと流していて、陽を浴びるように人がわらわらと外に出て伸びをしている。
犬も花もそこらじゅうの芝の一本一本までもが、うんと伸びをしている気がする。
目が合うとニコッと笑いかけたりかけられたりして、生きるって気持ちいいなア!C’est la vie!といった感じに町が浮かれる。

ところが朝からドン曇りの日やまして雨の日なんて、微笑みかける余裕なんてないさというようにみんな目を合わそうとしないし、店の人も皆殺伐としていて町が灰色な死を迎えた感じになる。昨日カウンター越しに会話が盛り上がったあの人もいつも挨拶を交わすあの人も、なんだか機嫌を損ねているように見えていい日にならない。
こういう日はもう何をやってもダメだと知っている。アイスクリームはきっと落とすし、お風呂のお湯は出なくなるだろう。面接なんて絶対落ちるし、スリーコインズでは不良品を引き当てるだろう。
こうなると月だって昇ってきてくれないかもしれない。
でもその気持ち、わかる。
こんな日はどっかに隠れているべきだって、そういうことだよね。
どれもこれも全部、町の機嫌が悪いせいなのだ。

天気だけじゃない。何か、本当に小さなきっかけでも、何かがこううまくハマらなかったり、クリックしていなかったり、それだけで半径2キロ一帯の町中はみんなガクンと気分が下がる。気圧とかわかりやすいきっかけがあれば回避できそうなもんだけど、どうもそうじゃない日があるから困っちゃう。
町の機嫌を読むための感覚、それは五感の外側にきっとあるのだろう。今はそいつを鍛えていきたいと思っている。

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