見出し画像

いつも言葉を探している

 以前参加したオンラインの会の動画で、自分が話している姿を見た。意見を言いながらもあっちこっちへと視線を移動していた。挙動不審とまでは言わないが、落ち着きがないように見えた。

 なにかに似ているなと思ったら、探し物をしている時に似ていた。
 上へ下へ右へ左へと目を動かし、なかなか定まらずにまた別の場所へと移動させる。そうしながらもたどたどしく言葉を紡いでいた。

 それを見た瞬間、なるほどと腑に落ちた。自分の思考や気持ちを表現する時、僕はいつも言葉を探している。
「あっ!」と思って目を凝らすと、だいたい似ているだけの別物で、口をついて出かけた言葉を引っ込める。一度発した言葉も「これであっているだろうか?」と自問しながら喋る。だから、つっかえつっかえ喋る。

 ただ、言葉を探しながら喋るのは、非常に自分らしいなと思った。筋道がはっきりしていて、無駄のない洗練された喋り方に憧れないでもないが、自分の発言に疑いを持たないのは嫌だ。

 形の整ったスーパーの品ではなくて、手垢のついていない、内に埋まった言葉を掘り出して、土を払い、吟味してから発する。だから、いつだって言葉を探している。いま、一番良いものを差し出したいから。

読んでいただきありがとうございます。 励みになります。いただいたお金は本を読もうと思います。