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来た道を戻る決断の訓練

 らくだメソッドをやっていて、現在高2の加法定理のプリントをやっているのだが、あまりの公式の多さに混乱してしまい、頭がおかしくなりそうになった。

 どうしても解けない問題が出てきて、自分が理解できていない事実が判明したので戻る決心をした。単元でいうと8枚分を戻ってやり直す。

 その決断をする時に、抵抗を覚えた。
「せっかく進んできたのに、引き返すのか」と思うと、とっても嫌な気分になった。なんとなく誤魔化したまま、進んでしまえばいいと囁く内なる声もあった。

 来た道を戻るのは、それ時点までの自分の活動を無に帰するような感覚があった。けれど、実際に戻ってやってみると、自分がなにを理解して、なにがわかっていなかったかが知れて良かったと感じている。

 振り返ってみると、戻る選択を人生でしてこなかった。先に進むレールばかりが僕達の人生には敷かれている。
 学校内での教育だって、次々と新しい知識を教え込まれていく。資格やスキルの習得法も学び方には幅が出て来たけれど、試験の形でチェックしたら、また次へ段階へ進む。戻ることはそもそも考慮されていない。

 僕達は戻ってやり直す訓練を不思議なほどやっていない。
 だから、前の道が閉ざされてしまった時に立ち尽くしてしまう。どう頑張っても進めなくなってもなお、前に進む方法はないかって考える。後ろを振り返ってみれば、別の道に続く地点まで戻れるかもしれないのに。
 自分のこれまでかけてきた時間と労力と費用=サンクコストが、後戻りを躊躇わせる。

 けれど、大事なのは「いま」だ。過去の苦労にしがみついたって仕方なくて、いま必要な選択をしなくてはいけない。

 だから、必要な時に必要な決断ができるように、戻る訓練をしてみることだ。わかっていたつもりのことを見つめ直し、知っていたつもりの人と改めて言葉を交わす。

 その訓練は新しい発見ができるだけじゃない。自分が、やり直せる人間だと実感できる機会でもあるのだ。

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ほんだ
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