エーデルワイスが教えてくれる

 地平線に夕日が落ちようとしている頃、ソプラノリコーダーの音が不意に聞こえてきた。聞き覚えがあるけれど、なかなか思い出せない曲。……そう、エーデルワイスだ。

 近くの小学生だろうか?
 ゆっくりとしたペースで時々音を外しながらも、繰り返し練習している。

 僕はそれを聞いていて、思わずほっこりした。
 男の子なのか、女の子かもわからないが、子どもが楽譜を見ながら、たどたどしく吹くイメージが湧いてくる。
 リコーダーの練習がいったい何になるのかはわからない。でも、とりあえずやってみる。どうしても苦手なところがあって、何度も同じ場所をやり直し、なんとかできた時の喜び。

 そういう体験を最近していないかもしれない。なにか意味のあることに時間を費やさなければいけないという強迫観念があり、無為に動画を見て過ごすと、罪悪感が後から追いかけてくる。

 くだらないことをやる時間は貴重なのだ。それを教えてもらった気がした。
 いや、くだらないと言ったら失礼なのかもしれない。その子にとっては大事なことかもしれないから。

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