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幻想をときほぐす

 能力の高い人はなんでもできるのだと思っていた。仕事もバリバリできて、学業も優秀、家庭も円満、顔も広い。そんな幻想を懐いていたけれど、意外とそうでもないんだと、最近になってようやく実感を伴ってわかってきた。

 だいたいの場合能力の偏りがあって、一方で人も羨むような名声を手に入れていても、他方で家族の問題を抱えていることも珍しくない。
 もちろん少数ながら万能型の人もいて、なんでも卒なくこなして全く不自由のない生活を送っている人もいる。けれど、ステータス的には文句のつけようのない人とこの前話していたら、自分の境遇に不満を懐いていた。

 いや、不満と呼ぶほどのものではない。ただ、渇きを覚えていて、心の隅で蠢くその感覚に本人が怖ろしさを感じているようだった。

 そんなものなのだ。

 なんでもできるが幸せに直結するわけでもなく、逆に1つしかできないが不幸に連なっているわけでもない。外から見えるものなんて役に立たない。幸福感は自分が感じるものであって、誰かに保障されるものではない。

 幸せとは現実に対する意味付けだ。そう思ったらそうなる。
 だから、置かれた環境なんて関係なくて、どれだけ自分を騙せるのかとあんまり変わらないのかもしれない。

 そうやって自己欺瞞に陥るくらいだったら、いっそ「自分」というものから離れてみた方がいいのかもしれない。誰という対象がなくなれば、「わたしもあなたも」なくなる。

 そうしたら、誰かと比べる必要もなくなって、他者が感じる幸せが自分のものになり、自分が感じる幸せが他者に伝播する。


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