ある日
しとしとと小雨の降る中で男の人がブランコを全力で漕いでいました。
晴れ間になかなか出会えず、傘を差すのかも迷うくらいの雨がパラパラと降る日々が続いていた時でした。
僕は昼ご飯を食べて時間がある時は散歩をしていて、よく通るコースに小さな公園があります。申し訳程度の遊具が2、3個あるだけの小さな公園。その目玉とも言えるブランコに男性がいました。
30代半ばくらいのその人は、ブランコを漕ぎながら満面の笑みを浮かべていました。
心底楽しそうにしているのを見て、僕はグッと来ました。
濡れないように傘を差すとか、ブランコは子どもが乗るものだとか、うっすらと僕らを縛る明文化されない常識や社会通念を吹き飛ばす様はとても美しく思えました。
自分が笑っているのを自覚しながら、散歩を続けていると、大きなお店の裏手に差し掛かります。そこは人通りも少ないので、路上駐車がしやすい場所なようです。いつも違う車が何台か停まっていて、車内でスマホをいじったり寝ていたりする人がいます。
そういう姿をいつも見ていると、「みんな働きたくないんだなぁ」と思っていました。
けれど、その日の僕は横を通り過ぎながら、「いいぞ、もっとサボれ」と心で呟いていました。
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