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『あつい胸さわぎ』感想(気にされる方は、ネタバレにご注意ください)-大好きな柴田聡子さんについて語りたい(18)

こんばんは。きりやまです。
現在公開中の映画『あつい胸さわぎ』をイオンシネマで本日見てきました。

ネタバレなしの感想

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ネタバレありの感想(ネタバレを気にされる方はご注意ください)

ここからは、少し詳細に感想を記します。これから見る予定のある方で、ネタバレを気にされる方はご注意ください。ただ、この映画はいわゆるミステリー映画ではなく、先に筋がわかっていても十分楽しめるものと思います。



「乳がん」がキーとなる映画なのか?
公開前にYouTubeにて公開されていた予告編の動画を試聴して、僕はそう捉えていました。
見終えて感じたことは、「そうとも言えるし、そうではないとも言える」です。

主人公の千夏(吉田美月喜さん)は、大学で受けた健康診断の結果をきっかけに、母・昭子(常盤貴子さん)の付き添いのもと乳がんの精密検査を受けます。
それがきっかけとなり、千夏は自分をみつめることになります。過去・現在・未来の自分に思いを巡らせ、悲観的な想像から自棄になり周囲の人間に感情的な振る舞いもしてしまいます。
そう捉えれば「乳がん」「乳がん検診」はこの映画を語るうえで重要な要因とも言えます。

しかし、この映画で僕が感じた最も大切なことは「家族」、「友人」、「恋人」、「職場の同僚」、そして「自分自身」といった自分を含む「自分に関わるひとたちに素直に向き合うことが強く生きていくことの出発点」というメッセージです。
「乳がん」「乳がん検診」はそこに気づくためのきっかけにすぎないものであるとも捉えられると思います。

「他人を応援するとき、ひとは自分自身を愛せている」
映画を見終わったあと、心にこの言葉が浮かびました。
木村さん(昭子の職場の係長・三浦誠己さん)は、気まずい関係になってしまった昭子に向かって"ファイト!"と声をかけ、昭子もそれを受け振り返って"ファイト!"と返します。

また、千夏が近所の幼なじみの崇(佐藤緋美さん)と自転車で出会った後に"がんばれ!"と心の底から応援するようなメッセージを投げかけます。

これらの応援はすべて、相手に投げるとともに「自分に向かって発している」と感じました。自分の境遇を呪い、自分を許せていない状態にいるときには周囲に思わず心ない言葉もかけてしまっていました。でも、「自分を許し愛せたときに優しい言葉を発することができる(誰かを好きになるとは、自分を愛すること)」というメッセージかもしれません。

「主題歌の『それでも明日は』が他の誰でもない自分から自分への応援メッセージとして響いた」
この映画を見ようと思ったきっかけは、Hana Hopeさんの歌われる主題歌『それでも明日は』の作詞を大好きな柴田聡子さんが手掛けていらっしゃったからでした。

この曲は映画公開に先立ち、サブスクで公開もされていました。ただ歌詞の内容について、何度か聞いてはみたものの、どんなことを歌われているのかをとらえきれずにいました。
映画を見た後の今、少しわかったように感じます。これは他のだれでもない「自分から自分への応援」のメッセージソングと思います。

「とんでもないことが自分に降りかかり、大変な思いをしているとき、もしかしたら身近にいてくれている人もそのことをうまく理解してはくれないかもしれない。でも、自分自身は自分をわかっている。味方は、ここにいるよ。」
そんなメッセージが込められているように思いました。

Hana Hope「それでも明日は」
作詞 : 柴田聡子/作曲 : UTA

「キャスト全員の演技力が高い。身近にいそうな登場人物たち」
他に感じたこととしては、やはりこちら。
登場人物が「身近にいそう」と思える、自然な演技。全員がすごい演技でした。
中でも常盤貴子さんの「飄々としながらも情に厚く思いやりのある関西のおばちゃん」、三浦 誠己さんの「不器用で空気が読めないけど優しいひと」の感じが特にすごい。

"ファイト!"の場面の前の"娘さんに言ったことを撤回します"というセリフの「的外れだけど、いろいろ自分なりに考えてきたんだな」という状況をあらわすあのくだり、すごくないですか?
あそこに僕は痺れました。ストーリーに誂えて省略したりせず、ひとりの人物を描き切っている感じ。本当にその人が存在しそう、というリアルさ。

そして主人公役の吉田美月喜さんの「感情を殺して我慢している時」と「素直に自分を受け入れたとき」の感情のコントラストの表現、見事、のひとことです。

以上、見たその日に書いた新鮮な感想です。
2023年、映画館で見た映画の第1作目がこの『あつい胸さわぎ』です。年始からとても良い映画に出会うことができました。

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