韓国映画デビュー。 『パラサイト 半地下の家族』
私は韓国映画を観たことがほとんどない。
映画だけでなく、ドラマもそうだ。
昔、母が好んで見ていた、いわゆる韓流ドラマをチラ見した時に、すごく偏った先入観を抱くようになってしまった。もうだいぶ前、冬ソナの少し後くらいだったんじゃないだろうか。
韓流ドラマといえば、劇的な事件が急ピッチでまくし立ててくるイメージが私の頭の中ではでき上がっている。あれよあれよという間にテンポよく事件が起きていくような感じ。1つのエピソードにそんなに盛り込まなくてもいいんじゃないの?と思わず口にしそうになるのをグッとこらえて、楽しそうにドラマに没頭する母を見守っていた。
そして、ひとり静かに、私は消化不良に陥っていった。
それ以後、好んで韓国モノを見ることはなかった。これが私と韓国映画・ドラマの15年来の関係性であった。
ところが、である。
日本ではまだ公開前だが、カンヌ国際映画祭でパルム・ドールを受賞した『パラサイト 半地下の家族』(邦題)が、どういうわけかとても気になっていた。
気になっていたものの、秋に開催されたバンクーバー国際映画祭では見逃した。見過ごした、と言った方が近いかもしれない。
カンヌのパルム・ドール受賞ということもあって、デカデカと取り上げられていたこの作品。でもまだ長年抱いていた先入観に半分囚われていたんだと思う。
しかし、今月に入って劇場公開されたと知り、ちょっと心がザワつき始めた。自分のスケジュールと上映スケジュールを見比べたりして、もう、観る準備はだいぶできていた。
さらに、そのタイミングで、小出氏(Base Ball Bear)がTwitterで、試写会で『パラサイト』を見て、めっちゃよかった!とツイートしてきたのだ。
(注:私は小出氏の映画コメントは結構信じている。)
もう、これは観るしかない。小出氏からのお告げだ。
背中を押されて先週末、日本の方よりひと足お先に『パラサイト 半地下の家族』を近所の映画館に観に行った。バンクーバー国際映画祭でSuper Channel People's Choice Award(観衆の人気票を一番たくさん得た作品)を受賞しただけあって、席もかなり埋まっていた。
私は不思議な気分に襲われていた。
韓国映画という未踏の領域に足を踏み入れることに、ものすごくワクワクしていた。ああ、そうか。私は新しいことをはじめる、という何でもないようなことを、しばらくの間怠っていたんだ、と、上映前他の映画の予告を見ながら、ふと気づいた。もう、それだけで、この映画を観に行く価値があった。
鑑賞後に湧き上がってきたのは複雑な気持ちだった。まだ日本では公開されていないので、深い話はしないでおきたい。でも、素晴らしい映画だ。それだけは言っておきたい!
すごくもやーんとしたものが心に残っている。もやーんとしたものは、ブランケットのように温かく心を包み込み、ほっこりとした気持ちを与えてくれると同時に、もやーんと社会の隅っこにベールをかけて何かを隠そうとしている気がした。
後から後からもやもやがわいてくる。もやもやと、私の心を捕らえて離さない。
私が昔持っていた先入観は間違っていなかったと思う。この映画は家族の話ではあるけれど、それ以上に、私が思う韓国映画的であり、社会への問題提起であり、良質のエンターテイメントであった。
メリー・クリスマス!私の住む街には、変なクリスマス柄のセーター(その名もugly sweaterという。)着た人が溢れている。
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