見出し画像

アイスランド旅行記㉝オレンジのジレンマ

前回までのあらすじ

リングロードを反時計回りでゆく帰路は、予想より長く遠く、、おさえていた最終日のホテルは間に合わないためキャンセルすることに。
そして旅の最後に、2度目のオーロラのサプライズ!キャンプ地の村で見た幻想的なオーロラとはまた違った、「これぞオーロラ!」という天体ショーを満喫した。

バスターミナルでの出来事

私はアナ(過去の旅行記を参照)と一緒にバスターミナルで始発を待つことにしていた。同じ大学から参加していた日本人グループのお姉さんお兄さん達は、宿泊先へ帰るとのことで、途中でバスを降りた。後からSNSで拝見したところ、出国前にアイスランドのレストランを楽しんだそうで。何とも羨ましい…。私はといえば、節約旅で結局アイスランドらしいものは何一つ食べないままだった。まあ、それも学生旅らしくて良いかな。

さて、バスはBSIバスターミナルに到着。

「ターミナル」という言葉のイメージとはちょっと違い、バスセンターといった感じ。でもさすがアイスランド、深夜でも中の治安は何の問題も無く、綺麗な空間にベンチが並んでいる。
夜ということもあり人も少なく、座ることができた。
写真を撮っていなかったが、このサイトを見ると中の写真も投稿されているので貼っておく。


さて、ここで再び浮かび上がるのは「食料問題」である。思えばコペンハーゲン空港でのアイス食べ損ね事件から、クレジットカードを使えなかった一人旅の期間、キャンプ中も足りない食料。ずっと食料不足に悩まされてきた旅だった(半分は自分のせい)。この日最後にした食事は、アークレイリのサブウェイで食べたサンドイッチ。あれから6時間は経っていたであろう。手持ちのおやつも無い…。

と思いきや、一個のオレンジがあった。旅行記㉗で書いた、別チームの家でこっそり拝借してきたオレンジである。

アナと二人で分けることにした。
彼女がオレンジの皮を剥いてくれている間、ふと周りを見渡すと、少し離れたチケットカウンターのあたりに、別チームにいた外国人メンバーの姿が見えた。何人かで話している様子。会話は聞こえてこないが、この状況で考えることは同じだろう。「何か食べたいわ」という話をしているのだと想像できた。

私「これ、分けてあげる?」

アナ「あの人たちにあげるの?私たちの食料を?」


・・・私たちはオレンジを食べた。二人だけで。

「あの人たちにあげるの?」と言った時のアナの目を、私は忘れられない。強い目をしていた。もう6年も経つというのに、この会話だけは、はっきりと覚えている。

私の「分けてあげる?」という一言は、染み付いた道徳観からなんとなく出た言葉で、自分の意思というより常套句として口にしたに過ぎない。それに比べてアナは、はっきりと自分の意思で私に問いただした。「自分たちの食料は、自分たちで守る。自己責任だ。」と(そんなことは言ってないけど)。あの場所では、アナが正解だった。と思う。

そういえば、実は私は柑橘系が苦手で、普段はオレンジなんて絶対に食べない。甘いと言われるみかんでも食べられないくらい、酸っぱいものが苦手なのだ。
しかしこの時は、躊躇無くオレンジを頬張った。疲れた体に、空っぽのお腹に、オレンジはこの上ないご馳走のように感じた。味わうというより、栄養として一瞬で全身に行き渡った。私はこの時のオレンジの存在の有りがたさと、アナに言われてハッとした気持ち…オレンジのジレンマを一生忘れないと思う。

ケフラビーク空港へ始発の時間になった。私はアナと一緒にFlybusに乗り込んだ。
2週間前は、一人でドキドキしながら買ったFlybusのチケット。空港の出口で虹を見て、ドキドキワクワクしながら乗り込んだFlybus。
今日は、キャンプで出会ったアナと二人で乗っていることがなんだか不思議だ。

↑旅行記も終盤になったので、過去の記事を振り返りたくなってしまう。

バスはケフラビーク空港に向かって走り出した。この旅行で唯一ちゃんと下調べをして、丸一日しっかり観光をした街であるレイキャビクから、どんどん離れて行く。またここに来ることはあるんだろうか。また来たいと思うのは簡単だけど、自分の今後の人生でそれが実現するのか、全然分からないなあ。そんな気持ちで窓の外を眺める。所要時間は45分。あっという間にケフラビーク空港に到着した。

空港の中に入る直前、これでアイスランドの土地を踏むのは最後だと思い、しっかりと踏みしめたのだった。

空港内のカフェ。ヨーロッパらしいけど、アイスランドという独特の雰囲気もある気がする。

1日目は真夜中の到着だったので、お店はほぼ閉まっており、人もまばらで寂しい空港という印象だったので、賑やかさに驚いた。

1階のカフェ「Joe&the Juice」のマーク。デンマーク発のカフェらしい。

しかし、時間はまだ朝の5時半。外は真っ暗である。
ガラス張りの窓から、建物のネオンと街灯が見える。

何かに使われるであろう木材がシートもかけられず無造作に置かれている。

長いエスカレーターに乗って、セキュリティゲートのある2階(だったと思う)へ上がっていく。

北極圏でも耐えうるダウンで有名な66°northの広告がアイスランドらしい。

最後のチェックイン

チェックインは機械で。行きは成田空港で発券したが、帰りはもちろん英語の機械を使わなければいけない。2週間の滞在ではもちろんペラペラになんてなっていないけど、英語に目が慣れているので、簡単な説明は理解できるようになっていた。

右上に出ているのは恐らく当時の時刻。3:49。今思うと、こんな時間に起きて行動していること自体がアメージングだ。
無事にチケットを発券し、印刷されたラベルを説明通りスーツケースに貼り付ける。


搭乗時刻(Boarding time)は6:50、出発時刻(Departure Time)は7:30。
搭乗時刻まで、まだ3時間ほどある。

ここで、韓国人のナムとお別れの時間が来た。彼女は私やアナより早い時間のフライトだった。私の英語力不足で深い話をすることはできなかったけれど、同室で年下の私たちに非常に優しく、ムードメーカーでもあった彼女との別れは寂しく、自然と抱き合っていた。

セキュリティゲートを通過し、出発ロビーへ。

次回、ついに最終回です。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?