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意味のない機械

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2人称のトラウマ―新造真人個展 wave of light評

―僕はアートを選んだけど、君はどうするんだい  小平駅の改札口を抜けると文明堂が目に付いた。石材店が数軒あって、花屋も目に留まった。お寺で展示を開催することもあってか神妙な気持ちがどこからか沸いてきて会場まで足を運んだ。照恩寺に到着すると一般住宅に入母屋の本堂が併設された造りに少し驚く。伺った夕方頃には洗練されたお寺のロゴの看板に灯りがつけられていて、モダンな暖簾が玄関口に垂れ下がり抱えていた緊張感をほぐしてくれた。  展示会場に入ると客間一体に緊張感が張り詰めていた。作品

    • 時間の生成が投射する生活についてβ版

      前書き 本稿では時間概念の考察を分析哲学と認知科学を援用して行い時間概念がどのように人の営みに影響しているか検討を行った。要旨は時間の成立には自己の成立が先立ち、自己は実存在による世界と自己の二重性〈自己の中の世界と世界の中の自己〉によって生成され、自己が経験することで参照される共同体内で獲得される属性を含んだ法則系との比較による差異によって時間が生じ、その法則系というものの構造に含まれる社会法則、物理法則、神話法則によって他者との時間秩序が共有される。 読むと哲学と認知科

      • 親しさの再起動、村上春樹を参照して

        要約:村上春樹読んで、親しさについて考えた、文化メディアの批評性は停滞して親しさを紡ぎ直せないよって話と〈観光〉がつくるストーリーから脱没入しよーって話。 村上春樹が描出した男女の親しさを表出する行為は現在でもカルチャー誌に横たわっていることは間違いなく、柴門ふみ、フリッパーズギター・POPPYEと時代のアイコンと相互作用的に影響し、近しい領域として「村上春樹」は今日も一つのカルチャーとして存在している。彼は親しさの表象をいくつも掬いとって描写した。それはJazz喫茶DUG

        • 「Aging展」ー 橋田朋子研究室&ドミニクチェン研究室ー時間による生活の編集

          前文 橋田朋子研究室&ドミニクチェン研究室が共催した「Aging展」についての考察です。時間概念にまつわる多様な解釈がつくり上げる虚構の生活イメージに対峙する実生活との齟齬は〈良い〉生活を送ることに関わる概念〈ウェルビーイング〉〈Time well spent〉を自然に導出している展示でした。Aging展では時間概念が展示全体に横たわっており物の経年変化、時間変化の可変性、時間と身体の関わり、時間変化による関係性の醸成などが背景に読み取れ時間の存在条件を要求している展示であっ

        2人称のトラウマ―新造真人個展 wave of light評

        • 時間の生成が投射する生活についてβ版

        • 親しさの再起動、村上春樹を参照して

        • 「Aging展」ー 橋田朋子研究室&ドミニクチェン研究室ー時間による生活の編集

          「役に立たない機械」を通した触感性の表象

          概要(ここだけ読めば、骨子書いた) 「ぞわぞわする」と形容される五感と記憶・経験などの高次認知機能の複合感覚である触感性を促す作品・プロダクトの考察を行った。触感性を成立させている構造の変遷をブルーノ・ムナーリ「役に立たない機械」と早稲田大学の設計演習「役に立たない機械展」、藤原麻里菜の「頭の悪いメカ」の参照を行い、それぞれの背景には<創作媒体の制限からの昇華>、<目的なき合目的の設計>、<情報コンテンツに対する『無駄』とのコントラスト>など異なる文脈があり、これらが触感性が

          「役に立たない機械」を通した触感性の表象

          『ブルーノ・ムナーリ』と『早稲田大学建築設計課題』を比較した役に立たないが意味する触感性の射程について

            概要 「ぞわぞわする」と形容される感覚である触感性を促す作品・プロダクトの考察を行う。題材としてブルーノ・ムナーリ「役に立たない機械」と早稲田大学の設計演習「役に立たない機械」の参照を行い、それぞれの背景には<創作媒体の制限からの昇華>、<目的なき合目的の設計>の異なる文脈があり、これらが触感性があることが妥当であるかを検討するにあたってモノの内在的要因と、鑑賞者との外的要因の考察を行った。そして触感性の成立要因は<制作>と<提示>の両方が鑑賞者に対して身体投影を促すこ

          『ブルーノ・ムナーリ』と『早稲田大学建築設計課題』を比較した役に立たないが意味する触感性の射程について