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図書委員会が嫌で嫌で仕方なかったあの頃

やりたくてやったわけではない。

じゃんけんで負けて仕方なくやるしかなかった。

誰もやりたがらなかった図書委員。

一番人気のなかった図書委員会。

小学校高学年にもなると、なにかしら委員会に所属しなければならない。

本当は掲示委員会か放送委員会に入りたかった。

どちらも激戦区の委員会。

委員会決めの時、希望者がたくさん集まるので必ずじゃんけんが開催されていた。

運に味方されることは一度もなく、私はやりたい委員会に入ることはできなかった。

結局、誰もやりたがらない図書委員会に所属するはめに。

図書委員になると昼休み図書室にこもり、貸出手続きの業務を行わなければならない。

本当はみんなとリレーしたり、ブランコ、鉄棒で思いっきり遊びたかったのに。

小学校時代、図書室に行って本を借りたり、図書室にこもって本を読むような子供ではなかった。

本を読むことが嫌いだったし、読書感想文なんてもっぱら書けるわけがない。

タイトルと名前を書いて、手がとまってしまう現象は毎度のこと。

本に全く興味がなかった。

本を読むくらいなら男の子と外でサッカーをして遊びたい。

女の子と長縄八の字跳び、連続100回をやっていたい。

とにかく本なんて読んでいられなかった。

どうして好きでもない図書室にこもらなければならないんだ。

図書委員会に所属しているというだけで気が狂いそうだった。

そうも言ってはいられず、なったものはやるしかない。

仕事に楽しみを見出さなければならない。

カウンターで借りたい本を渡されると、貸出カードに日付と貸出者の名前を書く。

返却された本は元の本棚に戻す。

それが図書委員の仕事。

常に誰か本を借りにくるわけではなかったので、誰も図書室にやってこない時は暇で暇で仕方なかった。

校庭から楽しそうな声がわきゃわきゃ聞こえてくる。

本当は私だって外で思いっきり遊びたいのに。

こんな仕事をするために学校に通ってるんじゃない。

みんなと昼休みに外で遊ぶために学校に来てるのに。

校庭で遊んでいる子たちを羨望の眼差しで見ている私。

辛すぎる。

かといって本しかない環境で本を読む気になんて全くなれない。

本に囲まれても本を読もうとも思わなかった私は、あらゆる本の貸出カードを眺めるしかなかった。

どんな子の名前があるんだろう。

全校生徒数が少ない小学校だったので知らない子はほとんどいなかった。

あの子がこんな本を借りるんだ、私の好きな子の名前はないかな、といった全く生産性がない時間を過ごしていた。

小田くん、『はだしのゲン』何回も借りてる。好きやなあ。貸出者の欄、小田くんの名前ばっかり。

さっちゃん、『わかったさんシリーズ』全部借りてる。お菓子作り好きそうだもんな。本見てお菓子作ったんかなぁ。何か作ってって今度頼んでみようかな。

下田くん、昆虫図鑑、ずっと借りっぱなし。半年も返却してない。返す気ないな。下田くんのことだから無くした可能性大。今度問い詰めてみよう。

ようやく昼休みの終わりのチャイムがなった。

嫌々業務を全うしたあとは、そそくさと5時間目の授業へと向かう。

苦痛な時間と嫌いな本から解放された私の足取りは、小学校生活で最も軽やかだったに違いない。


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