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バスケ部のくせにスラムダンクを読んでいなかったあの頃

私は、中学、高校ともにバスケ部に所属していた。
部員のみんなは小学校からバスケットをやっていて、
私だけ未経験者だった。

バスケットに興味を持っていたわけでもなく、
ただなんとなく運動部に入っておこう、という感覚だった。

練習は毎日地獄だった。
中学入学当初、新入部員は20人程いたのだが、
あまりにも練習がきつく、半分以上の部員が辞めてしまった。

私だけバスケット未経験者で、毎日食らいつくように練習に励んだ。

ドリブルもできなければ、パス、レイアップシュートもできない。

一人だけ、基礎の基礎からみっちりと練習する日々だった。



バスケットと言えば、アニメ「スラムダンク」を連想させる人が多いだろう。
私のドンピシャ世代のアニメだ。
当時テレビアニメで見たことはあったが、
漫画本では読んだことがなかった。

バスケット自体、好きでもなかったので、
スラムダンクにも興味がなかった。

私以外の部員は、みんなスラムダンクを読んでいる。

「ミッチーいいよねー」

とか

「やっぱ流川かっこいいよねー」

なんて話をしていて、私はいつもその会話に参加できずにいた。

「読んでないの?」と驚かれることもあった。

別にスラムダンクを読んでいないからといって、
バスケをしてはいけないという決まりはない。

サッカー部だからといって、「キャプテン翼」を読むのは必須なのか?

テニス部だからといって「テニスの王子様」を読むのは当たり前なのか?

ひねくれた性格だったので、「読んだほうがいいよ」と言われてもますます読む気になれなかった。

何よりも、バスケットができる人間が嫌いになっていた。
補欠であり、一人だけバスケットをやったことがなかった私は、完全にふてくされていた。

こんなにもきつい部活だと知っていれば、入部しなかったのに。
なんで入部してしまったんだろう。
さっさと辞めてしまえばよかった。
中学校入学して間もなく、私は憂鬱な日々を送ることになった。

なぜ、バスケットを辞めなかったのか。

バスケに負けたくなかった。
バスケができる人間に負けたくなかった。
ただそのモチベーションだけで、地獄の練習に毎日耐え忍んでいたのだ。

「きつくて、耐えられなかったんだな、あいつも」

なんて、

自分がやめたら、部員にこう言われるだろう。

バスケができる人間に、

「できない人間」

「根性なし」

という目で見られるのを想像すると、腹立たしかった。

だから、やめずにバスケットを続けてきたのだ。


スラムダンクもバスケットができる連中の話だ。
無意識に嫌悪感があった。
バスケットが下手くそな自分と、バスケットができる人間を完全に線引きしていた。
ひねくれた見方しかできず、純粋にバスケットが
できるようになりたいと思えなかった。

大事な試合でさえも、勝敗はどうでもよかった。
なんなら、さっさと帰りたいという気持ちさえあった。

私だって純粋にバスケを楽しんで、
コートで輝ける日がくることのではないかと、
信じていた日もあった。

だが、現実は厳しく、中学・高校ともに、
補欠のままバスケット生活は終わってしまった。

大人になってもバスケットに興味は湧かず、
スラムダンクも読んだことがなかった。

しかし、去年の冬、映画になるというので、ここにきて、
スラムダンクの存在が気になりだしたのだ。

もう、バスケットをやめて、20年近く経っているし、
今なら読める気がしていた。
今なら、まっすぐな心で、バスケットに向き合えるかもしれない。

早速、全巻用意した。

1巻から丁寧に読んでいく。

湘北高校、インターハイ出場が決まった場面で泣いていた。

あんなに、バスケ嫌いだった人間が、簡単に涙を流していた。

そして、あっという間に全巻読み終えていた。

胸が熱くなっていることに気づく。

あんなに、ひねくれた見方しかできなかったのに。

映画も絶対に観に行くと、即決した。

あの時、読んでおくべきだった。
もし読んでいたら、バスケットが好きになれていたのかもしれない。
未経験者であったとしても、桜木花道のように、
もっとがむしゃらに、バスケットができていたのかもしれない。


いよいよ公開時期となった。


3回も映画館に足を運んでいた。

3回とも、流川と桜木のタッチの場面で泣いていた。

あんなに、バスケができる人間の話に、嫌気がさしていたのに。

「スラムダンク、嫌い」、撤回します。

スラムダンク、大大大好きです。

もう一度、全巻読み返そう。

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