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この中にお医者様はいらっしゃいませんか?

私は医療従事者として働いていた経験もあり、
街なかで倒れている人や、怪我をした人を見かけると、
つい反応してしまう。

私は一度だけ外出先で救急車をよんだことがある。

広い歩道を歩いていたら、自転車に乗っている男性が
正面からやってきた。
何かにつまずいたのか、その男性は派手に転んでしまった。

痛そうに座り込んでいる男性。
そのまま通り過ぎようとしたが、男性の目の下が
出血しているようだったので、思わず男性に歩み寄った。

「大丈夫ですか?」と声をかけた。

男性は痛そうにしており、目の下がパックリと裂けていて、傷が深そうだった。
男性のメガネのレンズは割れて、フレームも曲がっていた。
簡単な処置では済まない状態だと判断し、
私はすぐに救急車をよんだ。

数分後、救急車がやってきて男性は運ばれていった。

また外出先で怪我をしている人や、急変した人に遭遇するかもしれない。
その時に備え、イメトレをしておこう。
そう思う時がある。

道端で倒れている人を発見。
まず、その人に意識があるか確認して、
誰か手伝ってくれる人はいないかを探して・・・

といったように、

「もし意識がなかったら」

とか、

「高齢者で転倒した様子だったら」

など、さまざまなシチュエーションを想像し、冷静な対応をしている自分をイメージしている。

そんなイメトレをしていると、ついつい余計なことを
考えてしまうことがある。

「この中に、お医者様はいらっしゃいませんか?」

というセリフ。

実際にそのセリフを聞くような場面に遭遇したことはない。

もし、その場面で全く関係のないことを言ってしまったら、どうなるのだろう。

例えば、

「この中に、歯磨き粉を最後まで使い切るため、
チューブを半分に切って、チューブの内壁に残った歯磨き粉をこすって、
最後の最後まで使い切るよ、という方はいらっしゃいませんか?」

とか、

「緑のたぬきの天ぷらだけを食べたくて、それだけ商品化してほしいと思ったことがあるよ、という方はいらっしゃいませんか?」

とか、

「この中に、大好きだった人のクロールの泳ぎ方をみて、幻滅して、まさに100年の恋も一瞬にして冷めたことがあるよ、という方はいらっしゃいませんか?」

とか、

「この中に、魔女の宅急便を見て、自分も本気で飛べるかもしれないと思って、ほうきにまたがって何度もぴょんぴょん飛んでみたり、少し高いところから飛び降りて、そのまま飛べるかもしれないと無駄に時間を使ったことがあるよ、という方はいらっしゃいませんか?」

とか、

「この中に、自分の親の性行為を見てしまった忌まわしい過去があり、今でもフラッシュバックすることがあって、
トラウマとして残っているよ、という方はいらっしゃいませんか?」

というように。

そんなことを考えるよりも、急変時の対応について、
今一度復習しておかねば、と我に返る。

その時の対応次第で、その人の生死が、大きく左右することだってありえるのだから。

まじめに、真剣にイメトレをしよう。


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