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メガネをかけたくて暗闇で本を読んでいた過去の自分へ

小学生の頃、視力2.0だった私。

視力が悪くなりたかった。

いや本当はメガネをかけたかった、だ。

視力が悪くなればメガネをかけられるという阿呆な発想。

メガネをかけている子が羨ましかった。

メガネをかけている姿がかっこよかった。

少し下がったメガネをクイっと持ち上げるさま、

メガネケースからメガネを取り出して装着するさまがキラキラと輝いていた。

私もやってみたかった。

メガネをかけていれば嫌いな算数が得意になるかもしれない、

一桁の足し算が指を使わずにできるかもしれない。

メガネは未知のパワーを持つアイテム。

メガネをかけていれば恐れるものはない。

でも私はバリバリの視力を持っている。

メガネを必要としない視力。

マサイ族に劣らない視力。

でもメガネをかけたい。

私もクイッとメガネを持ち上げて、算数のテストでいい点とりたい。

こうなったら、自力で視力を悪くするしかない。

テレビを至近距離で見る。

近ければ近いほど視力は悪くなるだろう。

テレビ画面に顔面が接触するほどの距離で見る。

画面に何が映っているのか分からない距離。

とにかく視力を悪くしたいだけの行為。

暗い部屋で勉強をする。

いや勉強はしていない。

暗い部屋で教科書の文字を読んでいるだけ。


そんな愚行をしている過去の自分へ言いたい。

メガネをかけていても、算数のテストで満点はとれなかっただろう。

メガネをかけていても、夏休みの宿題を計画通りに実行することはできなかっただろう。

メガネをかけていても、社会の時間に爆睡し地図帳がよだれまみれになっていただろう。


視力がいいことを誇りに思え。

視力がいいことを大切にしろ。

視力がいいことは宝なのだ。

視力が悪いと金も時間もかかる。

視力が悪いと生活に支障をきたす。

幸いなことに、私の視力はまだ1.0以上を保っている。

これ以上、阿保な行為はやめろ。

視力を悪くすることに頭をつかうな。

先生の話をよく聞いて、頭をつかえ。

黒板に書かれていることだけをノートに書き写して満足するな。

無駄に何色もペンを使って、見た目が鮮やかなノート作りに力を注いで、友達と競い合うな。

もっと重要なことに集中しろ。

わからないことはわからないと言え。

わからないことは恥ではない。



大人になって念願のメガネをかけた私。

伊達メガネをかけて、友達と遊んでいた時、

「目、悪いの?」

と聞かれた。

「ど、入ってないんだよね・・・。」

言うのが恥ずかしかった。

服装はダサいくせに、いっちょまえにおしゃれメガネかけてるなんて、と思われただろうか。

メガネが似合う顔面ではないくせに、と思われただろうか。

大木凡人みたいだ、と思われただろうか。

それ以降、私はメガネをかけることはなかった。

あれほどメガネに憧れていたのに。

のどから手が出るほど欲しいアイテムだったのに。



視力を悪くしようと思っても視力は悪くならないぞ。

もっとやるべきことに時間を使え。

視力と友達を大事にしろ。

テストでいかさまだけはするな。

先生にバレて、しこたま怒られるぞ。

あと、お父さんとたくさん遊んでおけ。


デロリアンがあったら、そう伝えてあげたい。

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