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自分で自分を殺したら地獄に落ちるぞという父の教え

父は花火をするとき、自分が吸っていたタバコで
花火に火をつけていた。

父は夏になるとパンツ一丁で過ごし、
見苦しい胸毛をいつもあらわにしていた。

父の爪にどうしてもマニキュアを塗りたくて
父が昼寝している間にこっそり塗ったことがあった。

父と一緒にすごした時間は23年。

父が亡くなって今日で14年経った。

そんな父が幼い私にいつも教えてくれていたこと。

何があっても自ら命を絶つな。

「もし自分で自分を殺したら、
地獄に落ちるぞ」

と何度も教えられた。

地獄に落ちたらどうなるの?
という私の問いに父は真剣に答えた。

「永遠に怖い思いをするぞ」

父は地獄の恐ろしさを幼い私に植え付けさせた。

「舌を切られるんだ、毎日。

ずっとそれを永遠に繰り返すんだ。

この世は死んだら終わりだが、
地獄は終わりがないんだ。

地獄で死ぬということはない。

ずっとずっと苦しむんだ。

それは怖いだろう?

絶対に自分で自分を殺したらだめなんだ。

いいな、わかったな?」

と何度も教えてくれた。

幼い私は父の言うことを信じ、
必ず守ると忠誠心を示していた。

何度も同じことを言うもんだから、
またその話か、と呆れることもあった。

話を聞くふりをして、
父の胸毛をみて時間をつぶすこともあった。

こんな胸毛男とは結婚したくない。

胸毛が生えていないお父さんが
良かったとさえ思っていた。

大人になった今、本気で死にたいと思ったことが
ないのは父の教えのおかげである。

だから今こうやって生きている。

毛むくじゃらの胸毛はあるくせに、
ハゲ頭なのは残念だったけれど、

父の毛深さだけはしっかり受け継いでしまったのは
悲しかったけれど、

何度も伝えてくれた父の教えがあって、
どんなに辛いことがあっても死にたいと
思わず今日も生きている。

自ら命を絶つことだけはするなよ、
地獄に落ちるぞ。

もし私に子供ができたなら、
そう教えてあげよう。


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