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気になってしまうんです

「お前は自分のことだけ考えていればいい」
そう父親からよく言われたものだ。

家族という小さな社会を自分の思い通りにしたいという傲慢な私の態度に対して言い放った言葉だと理解している。

自分のことは棚にあげ、弟の自分勝手な振舞いに怒鳴り散らしたり、祖母にあーだこーだ指示され腹を立て、祖母へのあたりが強くなったり、家の中ではずっと不貞腐れていた。

父親が言った「自分のことだけ考えていろ」というのは、自分勝手や自己中心に物事を考えろ、という意味ではなく、自分の内側にベクトルを向けていろ、他人をどうこうしようとするのではなく、自分の思考や行いに意識を向けていろ、そういう意味だったと思う。

他人に怒りをあらわにすることはほとんどなくなったが、気にしなくてもいいことを気にしてしまったり、他人の言動に敏感なのは今も変わっていない。

スーパーやコンビニ、ファミレス、美容室など、そういった場面で社員やスタッフの動きがついつい気になってしまう。

その人の表情や仕事ぶり、要領がいいか悪いかなど、勝手に判断したりチェックしたりしてしまう。

コンビニでレジに並んでいる人が増えているのに、商品の品出しをのんきにやっている店員がいたり、レジをしている店員も店員で、レジに並んでいる人が増えていることすら気づいていない状況になると、客のくせに思わず、「レジお願いしまーす!」と言いたくなる。

そういったことをいちいち気にするようになってしまったのは、年とともに仕事や人間関係の経験を積み、おのずとそうなってきたものだろうと思い込んでいる。

先日行った、とあるサロンでのこと。

スタッフの層は30代~40代の女性5人と、50代後半か60代前半のおばちゃんが一人いた。

おばちゃんはまだ経験が浅いのか、他のスタッフにあれして、これしてと指示を受けている。

自分よりも若い世代にあーだこーだ指示を受けて、どう感じているんだろう。

まだ、自分の判断で仕事をまわせていない様子。

よくよく観察するとタイマーを持ち歩き、自分の施術時間をはかっている。

他のスタッフはそんなことはやっていない。

タイマーで時間をはかることに、一体どんな意味があるのだろうか、と勝手に考えてしまっている。

まだ経験が浅いという意味でそういう対応をさせられているのか。

それとも、経験年数は他のスタッフと同じくらいあるのに、そのおばちゃんだけそういう対応をさせられているのか。

動きをみていると、自発的にタイマーを持ち歩いているとは思えない仕事ぶり。やはりそういうふうにさせられているのだろう。

施術自体はできているのだけど、時間がかかりすぎてしまっているから、サービスの質は落とさないのは前提で時間を気にしつつ施術しましょう、
なんて指導されているのだろうか。

年代が一人だけ違うが、他のスタッフと良好なコミュニケーションはとれているだろうか。

あるスタッフは明らかにそのおばちゃんに対して、声のトーンが違うし、表情も冷たい。
きっと仕事以外の時間も積極的におばちゃんに話かけることはしていないだろう。

なんて、勝手に想像している。

要領が悪そう、仕事ができなさそうな人の動きも気になるのだが、そういう方々に対する周囲の対応や態度、表情はもっと気になってしまう。

弱者に対する人への対応がその人の本質だとか本当の人間性が分かるだとかってよく聞くが、たぶんそんな状況。

おばちゃんが仕事ができないという風な言い回しで勝手に判断してしまっている私も私だが、やはり、その周囲のスタッフの対応やその場の空気を無駄に感じてしまう。

意識的にそう思うようにしているのではなく、無意識にやっていることが多い。

そんなことにエネルギーを使っている場合じゃないだろ、と我にかえる。

最近はそんな自分も、ま、いっかと開き直るようになった。


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