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Vol.5(2/2)聴覚障害者の「情報支援」について

「情報スムーズ化ツール」

について、以下、それぞれの一長一短をまとめます(私見、ですが !!)

■「字幕」


「字幕」があると、話し「言葉」の聞き取れなかったことを「見て」すぐに理解することができます。
しかし、字幕は「文字情報」という記号に過ぎないので、
話し手の「感情や抑揚」「他人の気持ち」「大事なところ」をそこから読み取ることは、かなり難しくなります。

テレビのニュースなど、単に「情報を得るだけ」の場合は、
特に差し支えないのですが、講演会や学校の講義など、話者が「音声」を用いて伝える場合には、「声のプロミネンス(抑揚、間、スピードなど)」を使って表現されていることが多いですね。

例えば、大切なところは、「声の音量」「速さ」「抑揚」「間」など様々な技法を用いて「ここが大切だよ」と伝わるようにしています。
私も教壇では「児童に伝わりやすい」ことを心がけています。

この「情報以外の部分」は、「パラ言語(paralinguistic information)」と呼ばれています。これを、「文字化」して伝えるとなると、文字の大きさ、レタリング、色…などを変えることになるんでしょうか?
お笑い系情報番組の「テロップ」に、近いもの?!かと思います。

引用:音声が伝える情報を逃さず捉えるための技術
Fairy  Devices株式会社
https://fairydevices.jp/fairyblog/9


■手話


「手話」それ自体にも種類があります。
著名なものですと、①「日本語対応手話・手指日本語」②「日本手話」。
これらはまず、それぞれの文法形態が異なりますので、簡単に説明します。

①日本語対応手話・手指日本語

話している「日本語」の語順に従って、言葉(単語)を「手話(単語)」に置き換えて表現する。

②日本手話


ろう者の間から生まれて発展した自然言語。日本語とは異なる、独自の文法体型を持っている。

手話(特に、日本手話)は、「言語」情報を伝えつつ、声のプロミネンス(抑揚、間、スピードなど)に当たる部分を「表情」「手の動き」「位置」「速さ」「文法」によって補うことができ、字幕では伝えきれない情報(パラ言語的要素)を補うことができるように思います。
なので、日本語が苦手な聴覚障害者は文字よりも、手話の方が理解しやすいという方もいます。

「じゃあ、“字幕” がなくても “手話” があればいいじゃん」 と思われますよね。
Vol.2でも記載しましたが、全ての聴覚障害者が手話をマスターしているわけではないのです。青年期以降に中途失聴した方は、手話よりも「字幕」が欲しいと思われる方もいます。


また、手話で、話題の「内容」「意味」はつかめるのですが、
聴者が「どのような日本語を使って話しているのか」については、伝えきれない部分があります。
そして、手話で日本語のすべてを表現できるかというとそうではなく、単語が手話表現として確立していない言葉や、手話では表せないものもたくさんあります。時代に合わせて新しい手話もできていますが、「表現できない」時は、似ている表現に置き換えたり、指文字、口話をつけて補ったりすることもあります。

例えば…
「すき焼き」という日本語を英語に置き換える場合に、英語には「すき焼き」という単語自体がないのでアルファべット(指文字)で「SUKIYAKI」と表現したり、すき焼きを食べる「動作」、または「牛肉・豆腐・野菜を煮る」という英文を手話化したりして表現するような感じでしょうか。
ここは、手話通訳者手話の技量、つまり「センス」と「語彙力」によります。


■ 音声


私自身のように「音は聞こえる」聴覚障害者の場合、「音・それ自体」から得る情報もあります。
それらの不充分な要素を、「字幕」「手話」で補完するわけです。


以上のように、
「どんな日本語を使って話しているのか」を、
「本当に話していること(言葉)」を知りたいと思うと、
「音声」「字幕」「手話」の3つがほしくなるのです。



しかし、実際には「字幕か手話か、どちらかでいいんじゃないか」と言われたり、「字幕」を推奨されたりする傾向が多いような気がします。


「手話通訳」の場合は、様々な理由、たとえば手話通訳をする時間、健康上の理由による不測の事態、事故によってたどり着けない場合などを考慮して、「2人ひと組」あるいは「3人ひと組」で派遣することになります。
聴覚障害者(個人)が、授業参観や病院の受診などで、通訳依頼する場合は無料ですが、企業や団体が講演会やイベントなどで派遣依頼をする際には「有料」になります。
その場合(企業側に)、当たり前に各個人の日当が別々に発生するし、依頼するにあたっての手続等に「手間」がかかります。



「聞こえる人」たちからしたら、
「ワガママ」「贅沢」「予算のことも考えろよ」と思われるかもしれません…それはそうでしょう!!
しかし、そのときに享受できる(だろう)「音声表現」が豊かであればあるほどに、3つほしくなるんです 。


これは、個人的な意見ですが…
私は、聴覚を使用する場合、これら3つの情報がいっぺんに入ってくると、頭の中が混乱するので、内容によって「音声+字幕」「字幕+手話」の場合が良い時があります。


例えば…

▪ ニュース的な情報


…例えば会議や連絡事項、TV(ニュース)を把握するときは、専門用語やなじみのない手話が用いられることが多いので、字幕の方が理解しやすい。

▪ 対話や絵本の読み聞かせ


…感情を伴うものの場合は、字幕より手話の方がはるかに理解しやすい。

▪ 映画やテレビ


…音声+字幕

▪ 講演、講義等


…字幕+手話



「聞こえる」「聞こえない」「聞こえにくい」壁
どのように「情報」の共有をしていくか、情報とは「コミュニケーション手段」でもあります。
その確保のためにする、自助努力、相手からの配慮、実際のスキル、かかるコスト、手間…  難しいところです…



きょうは、ここまで…
読んでいただきありがとうございました。