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こういう難局のために、現預金はある

 こういう記事を書きました。

 要は、「飲食店だけではなく、流通や生産者含め誰もが苦しいところで、自分だけ賃料棒引きを求めるような手前勝手を言うな」と「そうは言ってもお前のパンケーキ屋は5億7,000万円の利益剰余金を抱えているくせに、いまにも潰れそうな飲食店オーナーの立場を勝手に代弁するな」と「お前は上場しているPR会社ベクトルグループ(株式会社ベクトル)の社外取締役だろう。第三者のふりしてベクトルグループ子会社の『イニシャル社のバックアップ』を受けたとかいうな。要するに社業だろう」と「そもそも減賃交渉は保証会社が入っていたら受けられないのを知っててパフォーマンスをするな」という話につきます。

 そしたら、何かこの「外食産業の声」委員会は、各政党の政治家を集めて討論会をやったとかで、youtube見物してたんですけどたいして盛り上がっていませんでした。まあそれは仕方ないのかなとは思いますが、興味のある人はググってください。

#外食産業の声 第二弾「政党代表者と外食産業経営者のディスカッション」開催 外食産業経営者による有志の会「外食産業の声」委員会は、2020 年4 月28 日、コロナ禍で危機に瀕する外食産業の中でも今最も大きな問題のひとつとなっている「家賃問題」について、各政党代表者らに問題提起し解決策を模索するディスカッションを開催しました。

 救急医療でも災害救助の現場でもよく「トリアージ」という言葉が使われます。これはある種のトロッコ問題で、例えば救急車でケアして搬送できる人が一人だけだったとして、目の前に同じぐらいの負傷をしている男の子と高齢者が二人横たわっていたとき、どちらを救いますか、という話です。

 本来、等しく命は重いはずですが、残念ながら全員を救えないときに社会全体の利益などを考えて「命を選別しなければならない状況」に追いやられます。非常に残念なことですし、冷酷な話なのですが、あらかじめ決めておかなければ現場に無用に重い判断を迫ることになり、ただでさえ大変な医療現場が大混乱に陥ることになるのです。

 翻って、今回の新型コロナウイルスは、主に自主休業を求める政府や都道府県、自治体の動きもある中で、4月8日に『緊急事態宣言』が出されたことで経済に大きなダメージを負いました。この「外食産業の声」が言う外食ビジネスももちろん大変なことになっています。何しろ営業が自粛に追い込まれて休業させられているわけですから、大変なのも当然です。そこは同情しますし、頑張って欲しいと思う気持ちもあります。

 一方で、この経済混乱は外食産業だけでなく、流通全般や金融、一次産業のような生産者、製造業から観光産業まで、幅広い職種で売り上げの急減をきたしています。劇場公演が中止されてしまった舞台俳優や演出家のような人たちもいれば、真っ先に休業してしまった外食産業では先にアルバイトやパートスタッフも削減の対象になったはずです。

 こういう状況で、不動産業も外食産業もフリーランスなど働く人たちも、さまざまな産業や国民が等しく苦境にあるところがあるとき、誰を最初に救わなければならないのでしょうか。

 間違いなく、食べられなくなった国民です。税金で真っ先に救われるのは食えない人であり、そういう人が困難な状況に陥っても生きていけるようにするために国家があり、財政があり、憲法では国民に必要最低限の文化的生活を保障しているのです。誰よりも、救われなければいけないのはまず国民であることは間違いありません。

 しかしながら、この「外食産業の声」では、おそらく休業によって真っ先に解雇されたであろう非正規雇用の従業員やスタッフを維持し温存するためにモラトリアムを求めたいという話がほとんど出ません。あくまで、彼らの経営の問題について助からないという話を延々としているのであって、それも休業中に稼働していない不動産の賃料を払いたくないという話に過ぎないのです。

 私も零細ながら不動産を貸し出していますが、確かに駅前の店舗で売上が上がっているうちのテナントさんを見て「羨ましいな」と思いつつも、儲かっているからでは賃料上げさせろとか、株や売り上げの一部を寄越せというような話はしません。したくてもしません。できませんから。景気の良いときは、儲かって良かったね、と半笑いになりながら暮らしています。

 しかし、賃料・家賃保証会社を入れている限り、景気が悪くなったからと言って、じゃあ減賃交渉ができるかというと、基本的には応じられません。相手が上場企業のチェーン店で保証なしに入れているところもありますし、また、財閥系の建物でいわゆる「お願い誘致」をして入っていただいているところや、大手デパートなどで利益配分を決めて入ってもらっている店子・テナントさんは減賃に応じられるかもしれませんが、基本的には無理です。

 私どものお客様で、某大手コンビニエンスストアがあります。3月中旬になって、いきなり本部からご連絡を戴き賃料の減免のご相談があったときは「ついに来たか」と思いました。ご存知かもしれませんが、彼らの直営店舗は営業保証金と言われるお金を先出で多く入れていただく代わりに、家賃保証会社を基本的に差し入れないのです。したがって、保証金の枠内で賃下げを求められたり、場合によってはナチュラルに減賃を求められることはあります。その辺は、不動産オーナーとテナントさんとの間での力関係や信頼関係、および契約の結び方によって万別に違うと言えます。

 この「外食産業の声」委員会では、上場企業も含む多くの飲食店チェーン店や飲食店オーナーもいらっしゃいます。親切な方が、この「外食産業の声」委員会に参画しているすべての飲食店リストを送ってくださいましたが、中には個別の減賃交渉が可能な上場企業もいれば、明日にも潰れるような与信状態最悪なところも含まれています。

 呼びかけ人になっている松田公太さんについては、彼の会社の官報を見る限り、5億7,000万円の利益剰余金が積まれています。主張の中に、早ければ5月にも潰れかねないという文言も含まれていますが、少なくとも、彼が経営しているお店に関してはこれはおそらく嘘です。単に、稼働していない店舗について少しでも賃料を払いたくないというお考えがあったのでしょう。

 しかしながら、各政党の政策担当者を集めて議論しているのは、まさに不動産について賃料の一部減免や建て替えを国に求めるというものです。ある種のモラトリアムであって、これがダイレクトに不動産オーナー側にくると、今度は賃料ベースで収益計画を立て金融機関から借り入れを起こしている不動産オーナーを直撃しかねません。当然、これらの「外食産業の声」委員会が騒いで、例えば金融庁や国土交通省経由で「減賃交渉に応じるように」と言われても、交渉には応じても減賃はできないオーナーのほうが多いでしょう。ほとんどにおいて、家賃保証会社が入っているからです。

 仮に、減賃交渉に応じたとしても、いま客が入っていない飲食店はいずれ潰れます。というより、もともと飲食店は3年から5年で8割以上が潰れる産業なので、不動産オーナー側も家賃保証会社だけでなく、保証金を取り、連帯保証人を一応付けるケースが多いのです。私の身の回りの不動産オーナーは概ね7月を超えて客足が戻らないテナントさんには、減賃交渉ではなく退店を促す方向であるところがほとんどです。まずは出て行ってもらって空きにして、今後多少賃料が下がっても景気の良いところに入ってもらいたいと思うからです。もちろん、すぐに新しいテナントさん入ってくれない立地の不動産少なくなくあるかもしれませんが、基本的に、立地の悪いところ、不動産が古くて痛んでいるところはたいしたテナントさんは入らないのであんまり関係がないのです。

 したがって、いずれ潰れるであろう「いま不振で賃料が払えないと言ってくる飲食店」についてはオーナーとしてもどんなに顔見知りでも出て行ってもらうしかないのですが、本来、経済危機に際してすべての産業がモラトリアムで救われるはずもない、それどころか、政治が、政策的にすべての不振の民間企業を助けることなどできないのです。

 よく考えていただければ分かるのですが、我が国のGDPが550兆あり、一か月50兆円弱あったとして、これが、3か月にわたって昨年対比2割減少したのだとなれば、ざっと30兆円の穴が開きます。いますったもんだしている国民一人当たりたった10万円の支給をするとして、一発13兆円もかかります。いま経済対策でやっている総当たりの真水部分が19兆円です。要は、日本は国の財政よりも民間経済が大きくなりすぎていて、政策で全員を救うことなどできない、という話になります。

 そこで、前述の「トリアージ」が発生します。トロッコ問題として、いまみんな困っています、誰を助けますか。まず、絶対に困っている国民です。10万円の支給で助かるはずもありませんが、それでもまずは国民を救おうとします。

 次に誰か。インフラです。電力、ガス、水道、輸送、道路、通信、金融(決済含む)あたりは、是が非でも守らなければなりません。ここが死んだら、二度と日本経済は復活できないぞというところが、トリアージとして優先になります。

 では、不動産はどうでしょうか。間違いなく、補助など来ません。見捨てられます。それはもう、気持ちいいぐらい、放置されることでしょう。だからこそ、国には制度設計や都市開発の承認はお願いしつつも、国からの政策資金などなくてもどうにでもなるよう、内部留保を厚く持ち、利益剰余金を貯め、現預金を増やし、なるだけカリカリでパンパンのB/Sにならないように経営するのが安定した不動産業の要諦であります。

 もちろん、俗にチンパンジーと呼ばれる大回転の不動産デベの皆さんもいます。全力で土地を仕入れ、建物を建て、それを担保にカネを借り、全力で土地を仕入れてどんどんB/Sが膨らんでいきます。自己資本比率など低くてもええんや、いま大回転している俺カッケーと言えるチンパンジー経営こそカタカナ系やNewspicksイキり系経営者の真骨頂と言えます。中には、リーマンショックであえなく破綻したのに、何事もなかったかのように借金を完済して女優と交際し本を出し我が世の春を謳歌しているチンパンジーもいますが、彼もまた、この危機において再び大爆発する運命にあります。いいんですよ、そういうチンパンジーがいても。

 そして、外食産業はどうでしょうか。死んでいいんですよ。とりあえず形だけ保証協会なしで低利融資の枠を設けてくれることはあるかもしれませんが、新型コロナウイルスが来ようが来まいが、どうせだいたい潰れるのが外食産業なんです。そこの中で、わずか一握り、ごく少数の、ちゃんとした飲食に賭ける人たちが出て、その文化を担う人たちに客がついて、どんな立地でも繁盛店が生まれます。ゴミだらけの外食産業の中で、救われるべきなのはこういう「飲食に本当に身を捧げた料理人やオーナーたち」だけです。

 政策決定のトリアージから漏れた産業が、そういう冬の時代を生き残る秘訣はただ一つ。「現預金を多く積んでおくこと」以外にありません。CASH is KING。アリとキリギリス。現金のない奴は、死ぬんです。調子こいて内装にカネをかけたり、会社のカネで赤いポルシェを乗り回したり、愛人に代官山フラッグス裏のタワマンを買ってやるような日焼けゴリラは死ぬんですよ。

 でも、単品で松田公太さんは儲かる飲食店やってるんだから、こんなロビーになんざ手を出さなくても充分やっていけるほど優れた経営者だと思いますよ。会に居並ぶ顔色の悪い外食産業の皆さまに比べて顔がつやつやでオシャレマスクをしているのは余裕があるからなんじゃないですか。

 また、一般論として、私ら「トリアージの外にいる、政府から守られない、何かあると真っ先に死にかねない人たち」は、そうであるからこそ、捨てきれないほどの自由がある。仕事は選べるし、法に則り、適切に納税している限り、何でもやっていい自由がある。

 死ぬ苦しみの裏側に、何でもやっていい自由があるからこそ、私らは公務員を選ばず、電力会社に入社せず、自分の足で立ち、自分の頭で考えて経営をするという道を選んでいるのです。利益を出すのも損をするのも、すべては自分がやったことの結論であるからこそ、自由な人生を謳歌できるのです。

 本来のベンチャー精神って、苦しいときに政府に頼ることですか。国に陳情したり、政治家並べて賃料棒引きにしてよと頼むことですか。

 私は、それは違うんじゃないのと思いますけどね。

 生き抜くために、現預金を粛々と積むのです。そして、いざというときにそれを使うのです。なぜなら、いままで一緒にやっている、社員たちを切らなくて済むようにするために。これからも、社員たちと仕事をしていくために。

 何より、家族がいて、自分の健康があって、社会への責任があるとするとき、まさに「苦しいときに何をするか」で、その人の真価、地金が出るんだと思います。

 松田公太さんと「外食産業の声」委員会の皆さまの今後のご清栄を心より祈念しております。

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神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント

本当に私の記事が「スキ」なのか? 一生覚えておくからな。
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作家/投資家。当アカウントは概ね個人の意見です。情報法制研究所上席研究員、お座敷置物芸全般。ゲームと読書と野球と調べものと。

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