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「出産費用を全額公的医療保険で」方針を巡る懸念と議論

 案の定、医療政策上だけでなく大枠としての社会保障議論で争点になりつつあります。「出産育児一時金の支給額増額じゃダメなの?」ってのは正論なんですが、社会保険と公的保険制度のあり方については、目下もの凄い勢いで情勢が変容しており、確かに出産費用を全額公的医療保険で賄って出産する家庭への負担を減らす政策へ誘導しましょう、というのはいずれ出てくるんだろうなーと思ってはおりました。

 前段として、俺たちの菅義偉さんが総理時代に無理矢理推し進めた不妊治療の保険適用拡大については、当初「どないなことやねん」と議論になったものの結果的には看板政策としては当たりとなり、まあまあ良い感じで着地したことも背景にあります。

 で、当然このような流れに対して反論も出てくるのでありまして、飯田泰之さんが過去記事を無料公開するなど大盤振る舞いをしていたのでお前らよく読みましょう。

 社会保障全体で見るならば、疾病でもなく女性しか発生しない能動イベントである「出産」に対して、一時金支給ではなく広く保険料を徴収する公的医療保険で賄うなんてアレやないかというのは正論であって、それを言われるとある程度弁えている人であればまあそらそうですねとなるやつです。

 屁理屈を並べ出すと飯田さんへの反論なんて山ほど思いつくわけですが(それなら男性しかかからない前立腺がんはどうなるんだとか、出産は女性にとっての一大イベントで普遍的なことなんだから補助すべきだとか、広い意味で社会が受益するのだから公的医療保険で担うのは当然だとか)、政策面ではちょっとまた違った話になってきています。

 というのも、公的医療保険の受益者が高齢者に偏り過ぎているので受益する世代と支える世代の不均衡がある中で社会保障改革を断行する必要に迫られているのは皆さんご存知かと思います。ただ、この議論で言うならば「出産費を公的医療保険でカバーすべきかどうか」はむしろ遅すぎたのであって、本来ならば飯田さんの話も踏まえて別枠で出産に対する一時金か全額公費負担を可能にする別の保険体系を介護保険のように組んで、立ち上げに関しては子ども関係予算や子ども国債(失笑)でどうにかするという案も想定し得たように思います。

 もはややり始めるころには少子化もとっくに始まってしまって、いまごろになって公的保険で出産費用をカバーするしないで揉めている時点で駄目だろうと思うわけなんですが、これも飯田さんが書いている通り、そのカバーする出産費用の細目はどないするねん、周産期医療で産科がいままで培ってきた安全な出産を支える技術は無視なのかって話にどうしてもなります。

 これは医師会でも割れている話だし、日本産科婦人科学会でもまだこれといったすっごい統一的な見解とかは出てきていないように思います。ただ、着床前診断(検査)や生殖補助医療に付随する高度医療は当然別建てになるでしょうし、制度的には非常に危ういものになります。とりあえず始めてみても、後からあれが足りなかったこれができなかったとなって、ほうぼうから担当官が殴られてヘロヘロになる未来絵図しか見えません。

 それでも出生率向上のために日本政府的にはやらないよりマシであると同時に、カネがかかるから若い妊婦が赤ちゃんを捨てちゃうとかいう事態になることを避ける社会的意味も持つのかもしれません。正直、ワイからしますと賛成も反対もしがたいタイプの政策だなあと思っております。

 どうせ次は本丸の社会保障改革、医療提供体制の大幅な変更をしていかないといけないので、いまのうちに出生率改善に資する(かもしれない)出産費用の公的医療保険でのカバーはやっちゃえってのはあるかもしれないですね。知らんけど。

 画像はAIが考えた『分かんねえけどとりあえずやっちまえ、理屈は後から考えるからガンガン産めと叫ぶ岸田文雄と、菅義偉に感謝する高齢妊婦の群れ』です。

神から「お前もそろそろnoteぐらい駄文練習用に使え使え使え使え使え」と言われた気がしたので、のろのろと再始動する感じのアカウント