縮退している日本のカラオケ市場を見ると「消齢化」ぽく感じられるけど鵜呑みにはできないかもしれないね(追記あり)
日本に限らず音楽消費(🟰音楽市場)はストリーミング全盛プラス体験共有型市場(主にライブエンターテイメントなど)と円盤など原盤市場、カラオケ市場に分かれており、コロナ禍で混乱はあったものの徐々に全体が盛り返す一方、安価な娯楽としてのカラオケは引き続き縮退が続くのかなという情勢です。
で、徳力基彦さんがこんな記事を書いており、エビデンスが日経クロストレンドの記事とその元がカラオケ配信大手のエクシングのデータを使った博報堂の分析だったようです。元記事は契約してないので読んでません。
悩ましいところですね。
大学院とかでこの分析で読み取って良い部分と改善すべき部分はどこですかとかいう課題を出されるタイプのやつです。
たぶんですが、楽曲消費における年代ごとの価値観が消えたのではなく、楽曲を楽しむスタイルが変遷し、いろんな音楽に消費者がリーチできるようになったというだけなんじゃないでしょうか。
まず、音楽消費の全年齢化は日本に限らずどこの国での音楽市場でも起きています。理由は簡単で、ストリーミングでさまざまな年代、ジャンル、タイプの曲に安価にリーチできるようになったので、プラットフォーム事業者によるプッシュがある限り、ジャズから浪曲までデジタル配信されているものは一通り聞けるようになったからです。
それをプライマリ試乗とする場合には、特に「歌う」需要としてのセカンダリ市場としてカラオケ業界があり、ここはざっくり安価な娯楽としての若い人が歌うカラオケ文化のバックグラウンドと、歳を取ってもマイクを離さない歌を生涯の趣味とする中高層で成り立っているレジャーで、当然音楽を消費している市場全体から見ると「無視はできないが本丸ほどの規模ではない」サブ市場にすぎません。
それでも「金を出してでも自分で歌いたい」という能動的な人たちが支える市場ですから大事なのは間違い無いのですが、過去散々データで検証されてきた通り、遅行指数的に配信市場でよく聞かれた、盛り上がった楽曲がカラオケで歌われる相関ははっきりしています。耳慣れて何度も聞いてこれは流行っているし歌えそうとなって初めてカラオケで消費者が選考してくれる形ですから、カラオケで先に流行するということはまずありません。逆に言えば、エクシングが悪いわけではないがエクシングのデータをいくらこねくり回してもトレンドは分からないし現象の先打ちは起きない、今後起きることの確認もしづらいということにもなります。途中駅から電車に乗っても座れないわけです。
で、この「消齢化」も減少単体としてみるならば従属的であり、過去の楽曲にリーチできるのだから現象としてはあくまで見え方、解釈の問題です。この分野の分析は進んでおり、ストリーミング市場の浸透と好み(プリファランス)の確率発生で目下細分化が猛烈に進んでいっているのが現実です。楽曲提供側も意図して音楽を聴いてくれる消費者の各年代での代弁性を消しているというよりは、どの年代でも人間の恋愛、失恋を含めた情愛の念はかわらないので、あくまで曲調やアレンジ、歌詞、歌い手の力量などが備わっていれば過去の楽曲でもファンがつき、年代を超えて愛される楽曲が確率で発生して社会に浸透するのは当然のことと言えます。
しかも、最近では未開拓の楽曲ジャンルを好んでもらえるような配信スタイルをフィルターにする仕組みまでできそうな気がします。これはショート動画のBGM再生を駆使するとかA/Bテストで何たらというのと変わりませんが、まあ多分できるのでしょう。
なにぶん徳力基彦さんの記事だけ読んでもとの博報堂のレポートなどには目を通していないので、クライアントジョブで知ってる話と見比べて病院の待合室で時間潰しに並べてみただけですが、要望があればもう少し細く書きます。
画像はAIが考えた『墓に入ってもマイクを離さない歌が趣味の高齢者』です。