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文学フリマとお金の話

「芸術にお金なんてご法度だろ」
そんな声が聞こえてきそうなタイトルだが、今日は文学フリマとお金について話そうと思う。

今やネットで文章を書くだけならお金はいらないが、それをいざ形にするとなるとまぁお金がかかる。
金がかかるならやらなきゃいいというのは簡単だが、人の欲求というのはだんだんと膨らむもので、それがわかっていても止められないものだ。

ということで先日行われた文学フリマの収支について語っていこうと思う。
これから本を売っていきたいという方は、どれぐらいの収支会計になるのかを把握できると思うので、参考にしてほしい。
それでは始めよう。

①出店費用について

文学フリマ東京での出店費用はブースの大きさと椅子の数で変動する。
大きく分けて5つの金額となる。

①長机半分 椅子1個:6,500円
②長机半分 椅子2個:7,300円
③長机 椅子2個:13,000円
④長机 椅子3個:13,800円
⑤長机 椅子4個:14,600円

さて今回私が出したブースは④になる。

必要経費として、13,800円がかかるというわけだ。

②本の印刷について

さて、最も出費が多いところと言えば本の印刷代である。
本のクオリティを左右するため、削りすぎるのもよくないが、上げすぎると自分のお財布がすっからかんになってしまう。

私の今回の印刷物はこちら

①霧一礼文堂短編集『身体』 ページ数:約150ページ
 発行部数:15冊
②霧一礼文堂短編集『豊穣』 ページ数:約90ページ
 発行部数:15冊
③霧一礼文堂短編集『夢路』 ページ数:約120ページ
 発行部数:15冊

ページ数や装丁のクオリティ、紙質、発行部数、印刷所によって大きくこの値段は変動する。
今回は文庫本サイズでスタンダードな印刷セットで注文をさせてもらったが、平均するとおおよそ1冊あたり784円の印刷代がかかった。

印刷費用:784円×45冊=35,280円

文フリ本

おまけで見本誌も1冊ずつつけてくれた印刷所には感謝である。
印刷所によっては最低部数が30冊からなど制約がある場合もあり、自分の発行したい本の目的別で決めるのが最善だ。
私の場合は、納期を遅くするほど割引のきく印刷所に依頼した。

かなり丁寧に対応してくれるので、個人的にはおすすめの印刷所である。

③装飾について

さて、出店ブースと本は整ったが、それだけでは本は売れない。
お店を飾り、見栄えをよくすることで、お客さんに買ってもらう工夫が必要となる。

このブースを展開するために買ったものを公開しよう。

①テーブルクロス 1枚
②テーブルクロス止め 1袋(4個入り)
③コインケース 1個
④コイン受け 1個
⑤イーゼル 4個
⑥額縁 4個
⑦ホワイトボード 1個
⑧水性ペン(赤・黒) 1本ずつ
⑨ボード消し 1個
⑩クリアブックカバー(見本誌用) 1袋
⑪装飾花 3本
⑫養生テープ 1個
⑬ポスター印刷代

ポスター以外はすべて100均で揃えている。
これらの合計金額は約3,600円になる。

④収支計算について

さて、これまでの費用の合計を算出しよう。

①出店費用:13,800円
②印刷費用:35,280円
③装飾代:3,600円
合計:52,680円

これが今回の総費用……ではない。
なぜかといえば、この場所に行くための交通費や飲食代も含めると、
ざっくり56,000円ぐらいはかかっている。
私は発行部数も少なく、また電車で行ける距離に住んでいるため、まだ抑えられていると思うが、遠くから来ている人は交通費や宿泊代などがかかる。
それらを加味したうえで、本をいくらで売るべきかを考えていかなければならない。

・印刷代と出店代を±0にしたい場合
49,080円/45冊=1,090円

・総費用を±0にしたい場合
56,000円/45冊=1,244円

・利益率20%で利益を出したい場合
56,000円×1.25=70,000(利益:14,000円)
70,000円/45冊=1,555円

文フリでの本の販売価格だが、おおよそ500~1,000円がボリュームゾーンではないだろうかと思う。
また、これを考えるうえで必要なのが、お金の端数である。
文フリにおいて行きかうお金の多くが、100円、500円、1,000円である。
※稀に1万円札を出す人もいるが、本当に迷惑ですのでやめましょう。両替場所ではありません。
それを考慮すると、上記提示価格は1,100円、1,300円、1,600円となる。

だが、果たしてそれでお客さんは本を買うのだろうか?
普段手に取る本の値段を見ると、おおよそ1,000円未満だと思う。
安いもだと500円以下のものもある。

これは感覚の話となってしまうが、自分が手に取りやすい値段とは果たしていくらなのか、本命とは別に追加で買っていくのに優しい値段とはどこだろうかと考えるべきなのである。

結果として、私は1冊600円という価格をつけた。
すでにこの時点で原価割れである。

最終的な収支会計としては、下記の通りだ。

総費用:56,000円
売上(45冊完売):27,000円
合計:-29,000円

ということで大赤字という結果となった。
(分かり切ってはいたが……文字にすると心が痛い)

今回の出店は、自分が出店してどれぐらいの本が売れるのか、文学フリマに出店することはどんなものか、寄稿してくれた人の作品を多くの人に届けるにはどうするべきかといったことを知るための目的があった。

この-29,000円は勉強代としては非常に安いものだと思う。
以前20万円ほど払って、ビジネスセミナーを受けに行ったことがあるが、そこで受けたホワイトボード上の講義よりも、0から企画を立ち上げ、サークルを設立・運営し、当日販売した経験のほうが、遥かに価値のあるものだった。

また文学フリマの出店者同士でのつながりが出来たのも、大きな収穫である。

⑤最後に

文学フリマの出店は非常にお金と手間がかかる。
だからこそ、これまで何年も続けて出店している人のすごさに尊敬を覚えた。
向かいのブースを見れば「新しい新刊だしたんですね!サインください!」という光景が見え、ファンがついていることに羨ましさを覚えた。
まだまだ自分が新参者であるということを痛感した1日であった。

そんな新参者の私のブースに立ち寄ってくれる人は数多くいた。
売り切れた中で買い求めてくれた方に売る本がないというのは、非常に辛いものがあった。
また当日参加できなかった人も多数いると聞いたので、今回新たにオンラインショップを開設した。

今は600円で販売しているが、折を見て値上げをする予定だ。
現行価格で買いたい方は、今のうちに購入をオススメする。

さて、次回はポスター作りのCANVAの使い方、そしてオンラインショップの開設の仕方などを解説していこうと思う。

それでは。


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