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短編小説集

99
私の書き下ろした短編をまとめたものになります。
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2021年10月の記事一覧

黒山羊のハロウィン

「あ、死んだわ」 死ぬ直前の声というのは、もっと逼迫して、到底人間の出せるものではない断…

26

SS note杯 『神様カフェ』

「あのカフェにね、神様がいるんだって」 春菜の戯言を信じるつもりはなかった。 けれども、…

27

無限交差

「ねぇ、どうして私じゃないの?」 私は彼に必死に問いかけても、ただただ俯くばかりで、私の…

27

食生細胞(胎動)

人は愛を誓いたがる。 それは、互いの額に銃口を向けているのと同じだ。 愛ゆえに自由。愛ゆ…

16

今夜、雨鳴りにつき。

深夜2時30分。 私は雨の音で目が覚めた。 ベランダのコンクリート濡れ、ぽたんぽたんと手すり…

39

【短編小説】アザミの棘

教室に花が咲いた。 最初はほんの小さな、吹けば飛んでしまいそうな紫色の花だった。 花瓶に…

34

水仙と月の熱病

月の熱に魘され、喉がひたすらに渇く。 「あなたさえ、いなければ」 私は、夜中の2時45分になると、からくり時計のようにそう呟いていた。 夜の黒は少しずつ闇へと変わっていき、私の中に輝く消えてしまいそうな灯さえ食い散らかしていった。 ◆ 中学の頃までは、私に勝るものなどいなかった。 誰もかれもがかしずき、媚を売る。 ほんの少しの恩情を与えるだけで、男は泣き叫び、犬になる。 労をせずとも、容姿だけで権力を手にできた。 私の手の中では、自由と欲望が金魚のように優雅

【短編小説】時織りの手紙

 祖父が亡くなった。  つい二週間前のことだ。  あまりの突然の訃報に暁人は驚き、納骨が…

30

【短編小説】んもれ

ったく、なんで俺がこんな目に合わなきゃいかんのだ。 つくづく不幸なことばかりじゃねぇか。 …

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時織りの手紙(6)

令和3年9月1日 この日、暁人は珍しく朝7時に起床した。 夏休み中の大学生と言えば、お昼ごろ…

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