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ねこペティREMIX#17「アイスクリーム」(エッセイ「落下傘部隊」)


アイスクリーム
(Ice cream)


あまいにおいの

しろいやま

さむいおやまの

てっぺんに

いるあかいのが

きにかかる

つめたいにくきゅう

がまんして

とりにいこうか

まよいちゅう


今回登場したねこ:ユメ

2歳オス。好奇心旺盛でいらんことしい。


落下傘部隊


ただでもらえるアイスの味は格別だ。

夏休み、登校日以外で小学校に通う用事がふたつあった。
ひとつは朝のラジオ体操。
もうひとつが子供会で参加する盆踊りの練習で、こちらは最後にもらえるアイス目当てで踊り好きでもないくせに、割と真面目に通ってた。

学校までの道には、塀に挟まれ街灯もない、夜にはなにか出てきそうな真っ暗な場所もあったが、形を持たない恐怖心よりアイスのほうが強かった。
オレンジ照明の下で色が飛び、何味か口にするまでわからなかったコーンアイスが、なんだか妙に美味かった記憶がある。


同じく夏休み。
父の運転で高知まで行ったことがある。
県を跨いで移動するには山道をひたすらうねうね走るしかない、四国はそんな土地だった。

徳島ー高知の県境を超えたあたりから、山中500メートル〜1キロ(体感)ごとにひとつといった具合で、路肩に点々とパラソルが出現するようになる。
よく見るとその下には決まって、大きめの白い箱と小さめなおばさんがいる。人里離れたこんな山奥に⁉︎ と思われる場所にも、いる。

「『アイスクリン売り』だ」と父はいう。
そうかなるほど。なんの人かは分かったけれど僕の疑問はそのまだ先にあった。
どうやってこのひと達は、山の中それぞれの持ち場まで来たのだろう?
口の遅い僕は、他の家族がいろいろと話す中でそれを聞くタイミングを逃してしまう。
投げる相手をなくした疑問は、自分で答えるほかにない。こうして僕の心はいつものごとく、つじつま合わせのホラの世界へと足を踏み入れる__。


朝焼けを浴びながら空に浮かぶ巨大輸送機。中には白い箱が大量に積まれている。
輸送機は、国道沿いを低空飛行しながら箱のついたパラソルを次々と投下。
着地した箱の下半分が音を立てて開き、中からおばさんが現れる。
おばさんは、すばやく箱の位置とパラソルの角度を調整後、先程まで自分が収まっていた部分から折りたたみ椅子を取り出し、その場で箱の上半分に詰められていたアイスクリンを売り始める……。

今でも高知の上空にはでっかい輸送機が飛んでいるのだろうか。
ひょっとしたら現代のアイスクリン売りは、そんな大げさなことをしなくても、自走機能がついた最新型の箱で、自在に出勤できるようになっているのかもしれない。


※ウェブマガジン「にゃなか」掲載作品(2016~18)に書き下ろしエッセイを添えてお送りします。掲載順は当時の連載どおりではありません。

【次のねこ】


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